ジョブズと同じ一歩を踏み出す 『夢プロジェクト』はこんなイベント

  by misaki  Tags :  

手が届かないと思うような天才の、偉業への大いなる一歩はどんなものだったのだろうか。そこに想いを馳せたとき、今日では”特別な才能の持ち主”だと思われがちな人物も「誰にでもできること」から一歩を踏み出したのではないか……と思える。自分のやりたいこと――『夢』と言い換えることもできるだろう――を叶える第一歩。それは、『夢』を誰かに伝えることだ。

ジョブズが世界を変えた瞬間

スティーブ・ジョブズ。

彼が自宅のガレージで立ち上げたアップル社は、のちにiPhoneやiPadを世に送り出し、世界的に知られる大企業となった。同時に、ジョブズの名は”才能”や”成功”の代名詞となり、彼がこの世を去った今でも様々な場面で語られている。しかし、偉業を成し遂げ有名になったがために、彼の名前だけがひとり歩きしているという印象も受ける。学生寮の片隅でSNSサイト『Facebook』を開設したマーク・ザッカーバーグも同様だ。

ジョブズやザッカーバーグには素晴らしい才能やアイデアがあった。だが、彼らの成功の理由は、きっとそれだけではない。彼らがまだひとりの若者に過ぎなかった頃、彼らは自らのアイデアを言葉にし、周囲に伝えたはずだ。そのアイデアに賛同した人々が理解者となり、ビジネスパートナーとなり、ユーザーとなっていった。ひとつのアイデアが成功をおさめる過程には必ず、”誰かに伝え、受け入れられる”というシーンがある。そのシーンこそが成功の始まりであり、世界が変わる瞬間だ。ジョブズが自宅のガレージに、ザッカーバーグが学生寮に閉じこもったままでは、私たちは彼らの生み出したものに触れることはなかったかもしれない。

自分はジョブズみたいな天才じゃない。自分の望みはジョブズみたいに壮大じゃない。口にしたところで何も変わらないし、そもそも聞いてくれる人はいない。

――本当に、そうだろうか?

100人以上の人々が集い、仲間の『夢』、その日初めて会った人の『夢』に真剣に耳を傾ける…そんな場所がある。

言葉にすることで動き出す『夢』


「カフェを経営しお客様が飽きない空間を作りたい」「次世代の人たちの夢や情熱を後押しするキャリア・カウンセラーになりたい」「人と人の間に虹をかけるように、枠のない人間関係を作りたい」「家族に愛され、褒められて育った。だから自分も人を愛して、褒めて、承認する生き方をしたい」「多くの人に気付きをもってもらえる講演をし、眠る前には奥さんと子どもにキスをする。そんな一日を、講演家として送りたい」――。次々に飛び出す、熱をもった言葉。”ドリーマー”と呼ばれる話し手が、来場者を前に思い思いの『夢』を語る。2013年3月12日、渋谷Under Deer Lounge。『夢プロジェクト【S.A.L.U.D#8】』での光景だ。

平日の夜であるにも関わらず、来場者は100人以上。会場のいたる所で、来場者たちがお酒を片手に談笑している。ドリーマーがステージに登場し、スピーチが始まれば、談笑は期待感に満ちた静けさへと変わる。ドリーマーの夢は様々で、その話しぶりも十人十色。タレント顔負けのパフォーマンスを見せる人もいれば、緊張の面持ちで静かに語る人もいる。だが、その言葉はとても確かで、しっかりと聞く者の心に響く。自らの『夢』を、自らの言葉で語る。来場者はうなずき、笑い、涙する。スピーチが終わる頃、会場は再び拍手に包まれる。そのとき、ドリーマーの『夢』の応援者が新たに生まれる。

ドリーマーは『夢』を語って退場ではない。鋭い質問を投げかけるコメンテーターとの”ドリームセッション”が待っているのだ。コメンテーターは建築や音楽、飲食など多岐に渡る業界から招かれており、経営者やアドバイザーとして活躍する人も多い。「資金をどうやって作るか?」「達成度を数値化する方法はあるか?」、時には「何がしたいのか?」と厳しい突っ込みもあったりするが、根底にあるのは”夢を持つ人を後押しする”という温かい想いだ。ドリームセッションによって、夢を実現するための道すじはより具体的になっていく。

『夢』を言葉にし伝えることが、現実を変えていくのだ。

明日も仕事 だからこそ『夢プロジェクト』へ

この日の夢プロジェクトは、火曜日の19~23時という時間帯に開催された。それにもかかわらず、多くの来場者が仕事帰りに駆けつけ、エンディングまで存分に楽しんでいる様子が印象的だった。一週間も真ん中に差しかかかろうという頃、早く帰って疲れを癒す…のではなく、人でごった返す渋谷に足を運び、日付が変わる直前までイベントに参加する。これは肉体的にはなかなかに疲れる行動だ。平日の夜に100人あまりの大人たちが集うこと。それは、夢プロジェクトが「ちょっと疲れてても行きたくなる」魅力であふれている証だ。

夢プロジェクトの魅力、それは”『夢』×『出会い』”の場所であることだ。

「ここに来るとエネルギーが出る。知ってる顔が来るたびに増える」。来場者のある女性はオープニング前にこう話してくれた。

まっすぐな眼差しで夢を語る、そういう人の姿に触れるだけでも、どこか自分の心が晴れ渡っていくような心地よさを感じられる。そして「自分には、夢といえるものがあるだろうか」と考え始める。考え始めると、誰かに話をしたくなる。話をしたくなったとき、周りにたくさんの人がいて、気兼ねなく言葉を交わすことができる。そのとき心の中には『夢』の居場所ができていて、夢を分かち合う仲間も得られる。『夢』の居場所があるということは、自分の願いや希望に敏感になることでもある。やがて「ああ、自分が望んでいるのはこういうことなんだ」と気付き、新しい『夢』が生まれ、『夢』を叶えるための毎日が始まる。『夢』を持つことはよりよい未来を信じることだ。この先何十年と続くであろう人生を生きる楽しみとなり、喜びとなる。『夢』×『出会い』が生み出すもの、それは『生きる喜び』ともいえるエネルギーだ。夢プロジェクトはそんなエネルギーに満ちた場所であり、エネルギーが人から人へ伝わる場所でもある。「疲れているけど行きたい」というより「疲れているからこそ行って、明日への活力にしたい」、そんな想いの来場者もきっといるだろう。

また、夢プロジェクトはエンタテインメントとして純粋に楽しむことができる。ドリーマーによるスピーチはメインコンテンツという位置づけで、その合間にはハイクオリティな歌やダンスのショーケース、詩の描き下ろしなどが盛り込まれており、見どころ満載なのだ。

『夢』を語るというパフォーマンスと、エンタテインメントとしての完成度の高さ。それは夢プロジェクトが他の異業種交流会等と一線を画す部分だ。

夢に大小も優劣もない

夢プロジェクトは夢を持つ人だけのイベントではない。「日々を生きるのに精いっぱいで夢なんて能天気なこと考えられない」「いい大人が夢なんて言っちゃって…」と思う人にこそ、夢プロジェクトのメッセージが訴えかけるものがあるだろう。夢プロジェクトが最も語りかけるもの、それは”夢に大小も優劣もなく、身近なところに生まれる想いが世界を変える”ということだからだ。

この日のドリーマーの一人である成宮康一さんは、自らの夢として『”相方第一主義”を広め、愛に満ちた世界を作りたい』と話した。成宮さんの言う”相方”とは、成宮さんの恋人のこと。だが成宮さんは”恋人”や”彼女”という言葉ではなく、”二人一組、いなくてはならない存在”という意味も込めて”相方”と呼ぶのだという。”相方第一主義”とは、「相方が世界一幸せになってほしい」「相方のやりたいことをやってほしい」「相方の幸せが自分の幸せ」という三原則にもとづくもの。成宮さんの夢は、”相方”つまりとても身近な人の幸せを願うことから始まっているのだ。子どものころによく思い描いた「女優になる」「宇宙飛行士になる」というものだけが夢ではない。大人になり、自分の人生が自分次第であることを強く実感し、大切な人ができたからこそ生まれる『夢』がある。何かで世界一を目指す必要もない。自分や大切な人の幸せのために、決断し貫くこと。それは素晴らしい『夢』だ。成宮さんが”相方第一主義”を掲げたことによって、賛同した来場者も同じことを実践すれば”相方第一主義”は広がっていき、”愛に満ちた世界”だって実現できる。身近なところから生まれ、広がることで世界を変える。成宮さんの夢は、大きな可能性を秘めている。

「実は相方とケンカしそうになって、夢プロジェクトを辞退しようと思ったんですよ。でも、譲さんから”等身大でいいんです。現状をお話しください”と言ってもらって、話すことができました」と成宮さんは言う。”譲さん”とは、夢プロジェクトを企画運営するsalud entertainment代表の大深 譲さんだ。大深さんは「夢は身近なところ、自分の人生や目の前の人の人生を大切にするところから始まる」と考えている。その想いはイベントの関係者、来場者にも共通するもので、だからこそ夢プロジェクトの空間はやさしくてあたたかい。

成宮さんはこうも話してくれた。「夢はたくさんあるんです。でも、”何をやるか”より”誰とやるか”が大事。だから”相方第一主義”なんです」。会場には、成宮さんのスピーチを見守る”相方”の姿があった。成宮さんは”相方”と一緒に、数ある夢をきっと叶えていくだろう。

夢プロジェクトでは毎回、ベストドリーマーを選出する。この日ベストドリーマーに輝いたのは、「ラフターヨガを世界に広め、人の輪を作りたい」と語った山田省吾さんだ。スピーチでは来場者も巻き込んでラフターヨガの動きを紹介し、会場をひとつにした。山田さんはラフターヨガに出会う前、仕事の失敗に長い間落ち込んだ時期があり、借金返済のために労働に明け暮れたこともあったという。「当時から、”自分で何かやりたい”とは思っていました。そのために借金も返すという思いで。でも、何がやりたいのかはわかりませんでした」。しかし、ラフターヨガと出会い、ラフターヨガを通じた様々な人との出会いによって、「ラフターヨガを広めたい」という夢を持つに至った。『夢』を持つ人の人生がいつだって順風満帆で、いいことばかりなわけではない。失敗もするしうまくいかないこともある。そんな時間を経たうえでの『夢』なのだ。『夢』という言葉は、前向きな意味だけではなく、『夢』を持つ人が経験してきたつらいことや悲しいことの重みも持っている。

誰もが明日のドリーマー

『夢』持つことは能天気なことではない。『夢』を持つ人は、その希望と同じくらいのつらい想いを知っている。

『夢』は子どもだけのものじゃない。人生と向き合わなければならない大人だからこそ、生まれる願いがある。

『夢』は大きければいいわけじゃない。きっかけはいつだって身近で個人的な体験なのだ。

『夢』は特別な誰かのものじゃなく、あなたのものだ。望むことがあるのなら、胸を張って言葉にしていこう。もし聴いてくれる人が見つからないなら、たくさんの人に言いたくなったら、夢プロジェクトがあなたを待っている。

《終》

 

2013年3月12日『夢プロジェクト【S.A.L.U.D#8】』(会場:渋谷Under Deer Lounge)

ドリーマー:福大志/瀬口祐樹/成宮康一/片岡真里枝/古箭祐三/山田省吾/小俣慶仁

パフォーマー:横町七瀬&りさ(ダンス)/福大志(弾き語り)/たっくんコドナの落書き(描き下ろし)

コメンテーター:加納敏彦/矢上尚武/海藤哲治

(敬称略)

salud entertainment

企画運営代表:大深譲

企画制作代表:齊藤真弘

エージェント:本告紀子/武田健児/西澤直登

サポート:大深奏子

(敬称略)

団体概要:東京を中心に全国でクラブイベント、ライブイベント、パーティーイベントを企画・運営するエンタテインメント・クリエイト集団。『夢プロジェクト【S.A.L.U.D#8】』はその名の通り8回目の開催であると同時に、同団体の通算125回目のイベントとなった。イベント収益の寄付による継続的な震災復興支援や、難病ALS患者マカ氏を迎え命の大切さと生きる喜びを伝える『MPSP(Maka Positive Support Project)』など多方面で活動中。

 

 

 

 

 

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