サンドニの沈黙

  by 赤いからす  Tags :  


2001年の「サンドニの悲劇」から11年。当時トルシエジャパンは自国でのW杯を控え、手痛いアウエーの洗礼を受けた。0-5という結果をお覚えている人もいると思うが、実は屈辱はそれだけじゃなかった。試合前日に練習する場所の治安が悪く、サッカーのピッチと野次馬を隔てる距離は柵しかなかった。檻の中で練習しているような異様な雰囲気が漂っていた。案の定、シュート練習中に少年が乱入してキーパーがいるゴールネットにボールを叩きこんだ。柵に囲まれたピッチの外の野次馬は大喜び。そのシュートをした少年は日本代表より僕の方がうまいんだぞ、といわんばかりに得意げだった。練習場所に関して日本サッカー協会も抗議していたが、全く相手にされなかった。当時、ジダンがいたフランス代表に試合前の準備段階から苦い経験をさせられた。
あれから11年、日本代表の環境は大きく変わった。
海外のクラブチームに移籍する若い選手が増え、しかも試合に出て活躍するばかりじゃなく、香川真司はビッククラブのマンチェスターユナイデットに移籍した。

フランス代表デシャン監督(43)は10日の会見で「日本戦は、スペイン戦(16日のW杯予選)に主力をいかにフレシュな状態で出場させ、これまで出場時間のなかった選手をどのくらいプレーさせるかが目的」と、控え組中心で挑む名言した。

日本も本田、岡崎、前田がケガで離脱して、自分にかかる責任感からなのか、

香川は「フランスは身体能力は高いけど、アフリカのように、そこに頼っている。DFは、イージーなラインの上げ下げだったりマークの意識があるので、マークを外せばチャンスになるなと」と珍しくビックマウスを披露した。

そして、日本がどれくらいレベルアップしたのか試される今日の試合。
前半からフランスが激しいプレシャーをかけて、日本は完全にペースを握られてしまう。前半の日本はシュート1本しか打てなかった。
しかし、後半フランスは調子の良かったレアルマドリードのベンゼマを交代して、試合の流れが変わってくる。フランスの運動量も落ち、スペースができる。日本がゴール前まで攻める回数が増え、ようやく試合のペースを掴む。
フランスは慌ててリベリを投入するも、日本が酒井から内田、中村から乾、長谷部から細貝、ハーフナーから高橋に代えると完全に日本のペース。特に乾はシュートの意識が高く、投入されてからチーム全体のリズムが良くなった。
そして、後半43分、相手のCKから今野がこぼれ球を拾い、そのままドリブルして右サイドにいる長友にパス。長友はダイレクトでゴール前へ折り返し、香川が倒れ込みながらゴール。サンドニのスタッド・ドゥ・フランスは沈黙。カウンターが見事に決まり、日本がフランスに0-1で勝った。
試合内容はフランスの決定力不足に助けられたところもあった。しかし、格上の相手に厳しい状況で勝てたのは大きい。
心配なのはボランチでキャプテンの長谷部。ミスも多く、元気もなかった。代わりに入った細貝が相手に闘う姿勢でボールを奪いにいっていたのとは対照的な出来だった。これから長谷部不要論が出る予感さえする。
ハーフナーマイクも周りの選手との連係がかみ合わず、本田のようにボールキープして味方が上がってくる時間を稼ぐという場面も見られなかった。ザックはよく我慢して使っていたなと思う。でも、考えてみれば速攻のときに邪魔にさえなっていたハーフナーを試合終盤まで交代させなかったことが、あのゴールに繋がったのかもしれない。ゴールが決まったカウンターは、フランスにとって体感的にかなりハイスピードに感じたことだろう。
残り時間が少なかったとはいえ、フランスは日本に先制されてからの落胆ぶりは尋常じゃなかった。攻めよう!という選手はごくわずか。日本がアジアのチームと戦ったときでさえも、あの時間帯はもう少しヒヤヒヤさせられるものだ。W杯出場を心配してしまうほど、この試合のフランス代表はひどかった。
日本は就任4試合目のデシャン監督に初黒星をつけたことになる。
次の親善試合の相手は自国開催のため、W杯予選免除のブラジル。
ブラジルは中国に8-0、ジーコ率いるイラクに6-0で勝っている。
ポーランドで試合をする火曜日のブラジル戦がとても楽しみだ。

画像:from flickr YAHOO! (http://www.flickr.com/photos/sdhansay/7758891458/)

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