プログラマー、ゲーム会社社長、そして仮想戦記作家――挑戦し続ける作家、羅門祐人

作家、羅門祐人。
宮部みゆきや東野圭吾のようなベストセラー作家に比べると知名度は劣るだろう。
しかし一部のファンにとっては仮想戦記作家の重鎮として尊敬され、多くの作品を読まれている。世間のベストセラー作家とは異なる、コアなファンを持つ作家だ。

筆者が最初にこの人物を知ったのはファミコンソフト「ミネルバトンサーガ」からだった。
ファミコン全盛期にプレイしたこのゲームに当時小学生の筆者は衝撃を受けた。

「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といったファンタジーRPGが流行していた当時、他の人たちがやってなさそうなゲームをやりたいという気持ちで「ミネルバトンサーガ」を購入、プレイした。
そして壮大で緻密な世界設定、豊富な会話の数、仲間や傭兵と共闘するユニークな戦闘、人々の出会いと別れのドラマにファミコンRPGでここまで表現できるのかと感動した。

「ミネルバトンサーガ」で羅門祐人氏の名を知り、氏の執筆したライトノベル「ガデュリン」シリーズを読みふけり、他のライトファンタジーとは一線を画したガデュリンワールドに夢中になった。

その後「青き波涛」「覇王の軍」といった仮想戦記小説や「覇・信長記」といった歴史のIF小説等、精力的に執筆活動をおこない、これまでに200冊以上もの作品を出版している。

そもそも経歴からしてすごい。医大在学中にゲーム会社を設立、社長兼ゲームデザイナーとして制作指揮をとり、その後作家の道へ至る……ゲーム制作から小説家になっても独創的な世界構想は変わることはない。

氏はこれを「シムシビライズ」と呼ぶ。仮想文明、非現実的でありながら徹底的にリアリティにこだわることで本当に実在しそうな兵器や艦船を作品に登場させる。膨大な知識と飛びぬけた発想力を持たなければ不可能な創作法だ。

過去に新人作家育成も行っており、筆者も小説の書き方を教わった貴重な経験がある。

「水準の高い作品を読者へ向け書き続けろ」
「プロに甘えは許されない」
「自分の本が書店のどこのカテゴリ、どこの棚に並べられるかまで想定しろ」

プロの言葉は重く、説得力があった。

作家、羅門祐人インタビュー

影響を受けた作家やシナリオライターはいますか?

 志賀直哉 北杜夫 平井和正 栗本薫
 オースン・スコット・カード

どうして医大生の時にゲーム会社を起ち上げたのでしょうか?

 ちょっとした事情があって親に勘当されたため、学費を稼がなければならなくなった。

ゲームや小説を創作するうえで注意している点は?

 設定がきちんと固まっていて、ラストシーンがはっきりと見えていること。

どの作品も世界観の造り込みがすごいですがシムシビライズをおこなう理由は?

 自分自身が、パラメータを変えた世界を見てみたいから。

羅門さんからみた現在の小説界、エンタメ業界の現状の面白い点や不満点は?

 今に始まったことではないが、何か売れると出版社やソフトハウス側が、すぐ同じシチュエーションの作品を求めること。現在の異世界モノが典型例。異世界モノはほぼ無限の可能性を秘めているのに、このままでは数年持たない。

これからの作家志望、クリエイター志望の若者へ向けていいたいことをどうぞ

 作家は、ともかくひとつのストーリーを作品として完成させること。クリエイターは、最初は真似から入ってもいいけど、プロになるにはオリジナリティが不可欠なことを自覚すること。

―――ありがとうございました!

 
 

史実はひとつ。その史実を多角的に見ることで新しい発見、解釈が生まれる。
それが仮想戦記小説だ。エンターティメント小説として楽しめながら、作品の奥に氏のメッセージが垣間見える。羅門祐人は60歳を過ぎて尚、新しい物語を紡ごうとじっと遠くを見ているだろう。

(画像 「ミネルバトンサーガ ラゴンの復活」TAITO/米田仁士)(文責 マツダ草介)

糖尿病など厄介な病気を抱える新米WEBライター。静岡在住。 本業の労働のかたわら、ネットのあちこちに文章を書き散らす日々。 サブカルチャー、オタクカルチャー界隈のゲームや同人音楽を研究中。 「つまらない時代に面白い人が面白いことをやっているので取材して記事にする」がモットー。

Twitter: soosuke_m