宝くじの悲劇!? 「年末ジャンボ1億円当選男」最悪の顛末 – 第4回 –

  by 丸野裕行  Tags :  

銀行の投資信託を断り、先物取引に手を出してしまった西田春夫さん(仮名・56歳)は、悪質な先物取引詐欺グループの手口にハマり、どんどん転落していく。それにすら気が付かない彼にさらなる災難が続く。

気になるのは妻の存在

いきなり1億円もの大金を手にしてしまった人間に、「足元を見失うな」「調子に乗るな」「浮かれるな」という方がムリな話ではある。
しかし、ここまでの話を聞くと、西田氏の人の好さや甘さ、世間を知らない部分がよくよく見て取れる。それが、近づいてきた者につけ込まれる大きな原因であることは確かだ。結局のところ、彼がつぎ込んだ先物投資額は、すべて含めて2,000万円ほどになった。

ここで気になるのは、話の端々にも出てこない妻の存在である。彼が有頂天になって、暴走しはじめたところを家族として制止できなかったのだろうか?
そのことを尋ねると、酒3杯に続いて頼んだチューハイを飲み干し、口を開いた。

妻の様子がおかしい

いやぁ、そんなに会話もせーへんかったんでね。静かに小遣いもらっていましたよ、はじめは……
ブランド品を買い漁ったり、自分が欲しかった化粧品を買ったりと、まぁ、可愛いもんでした。でもね、まぁ人間ですわ。嫁さんも金の魔力に惑わされてしまってて、おかしくなってたんです。

ある日、通帳を覗き込んでみると、預金額が目減りしている。「ん? これはなんや?」と。
そしたら、3日前に1,000万円が引き出されている。そんなはずはないんです。この通帳を管理しているのは、僕と妻だけなんですから。

「おいぃぃ! 1,000万円はどないしたんじゃ! おまえが引き出したんやろ、これ!」
「……」
聞いてんのか! コラ!
「……ごめんなさい」

話を聞いてみると、なんや自分の父親に勝手におろしたその金を回したらしい。それも義父の株の穴埋めに使っとったと。さすがに、妻や家族には優しいこの僕もはらわたが煮えくり返りましてね。

ド素人が株なんかに手ぇ出して、うまいこといくわけないやろ! アッホか! 金をドブに捨てるようなもんじゃ!」
「……」
うまい話には裏がある! そのくらいわからんのか、ボケ!」
「ええやない! あんたかて、あのアホの兄弟助けたったんやろ! 返ってもこーへんのに!」
「な、なんやと! オレの兄弟に向かって! おまえんトコのボケジジイの補てんなんかしたないわ! 慰謝料じゃ出ていけ!

と、もうそのまま離婚ですわ。子供たちも最近では僕と距離ができていたので、そのまま嫁はんと出ていきました
金で人の心は変わるというのがよくわかるでしょ? 長年連れ添ってもそんなもんですわ。

投資ビジネスにハマる

まぁ、余計な家族がおらんようになったということで、その分の時間を事業に打ち込めると。
何事もピンチをチャンスに、ポジティブにいかんと、と考えました。

先物取引のほかには、『ニッソーファイブネット(仮名)』という衛星アンテナを使った携帯電話の会社に投資しました。
スーツ姿の高島礼子似の女に説明会にくるように誘われてね。それで、まぁこれまでの携帯電話とは違うという話を懇々と聞かされまして。
その気になってしまったんですね。そこでも200万円ほど騙されました

もう自分がやることのすべてが裏目、裏目に出てしまって、泣けてきましたわ。
ずっと投資してきた先物取引の会社の正体も、豊田商事の残党やってみたいで。全国で数百人が騙されてました
知らん弁護士から電話がかかってきて、全国に被害者の会が発足しているから入れと……。
それ入ってどないなりますねん、ホンマに。大マヌケですわ。

嫁はんに泣きついて謝ればゆるされるかな、とかそんなことばっかり考えてました。
家族がいれば、もう一度やり直せるかな、と。

せやけど、タイミングが悪いですね。嫁はんのオヤジが養育費を毟り取りにきよったんです。
家を売って、「子供たちの養育費用をよこせ」と怒鳴り込んできました。
「株の穴埋めの件はどうなったんや!」と追い返しましたが、もう元の鞘に戻ることは絶望的です。

それからは、ちゃんと養育費を嫁には支払ってます。子供には罪はないですから。
なんだかんだで、そのころ、もう手元には600万円くらいの金しか残ってませんでした。
この金を元手に社会生活をしっかりと送ればよかったんですが……。

フィリピーナにハマって……

ストレスのはけ口になるのが酒になったのはこのころです。
苦手やったけど、まぁ慣れるもんで……。
心のよりどころになったのは、大阪宗右衛門町にあるフィリピンパブでした。

RIYAという20代のフィリピーナにぞっこんになってしもうてね。
ほら、やっぱり向こうの女の子は男によく尽くしてくれるし、優しいんでね。
知らん間に、400万くらいが飛んでいったかな……。

そこからがまだまだ地獄ですわ。

≫≫『甥っ子に誘拐される』へ続く

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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