進戯団夢命クラシックス主催舞台『ROSE GUNS DAYS~Season2~』公演レポート―物語が伝えるもう1つのテーマ―

『進戯団夢命クラシックス』という劇団をご存じだろうか?

本劇団は、伊藤マサミ(代表)が東放学園の同級生のメンバーへ声を掛けて立ち上げた演劇集団。所属メンバーも演劇以外に演出や殺陣、振付など、各分野で活動しており、それぞれ“表現”において人気が高い。

本劇団員は経験の有無を重視せず、役者として舞台の上に立つ個人の表現力や技法、さらには演劇に対する姿勢に重きを置く。観劇する人が、“目で見て楽しさを感じ取る演劇”をコンセプトにしている。

現在、12月6日(水)~10日(日)まで、神奈川県・ラゾーナ川崎プラザソルにて舞台『ROSE GUNS DAYS~Season2~』を公演中。そこで、本舞台がどのような内容なのか、2日目のマチネ公演の模様をレポートする。

劇団ならではの演劇性と観客たちに感じ取ってほしいメッセージ

突然ですが、筆者から皆さんへ問いたい。

“あなたは醤油を知っていますか?”

誰でも分かる問いに思わず失笑してしまう読者もいるかもしれない。しかし、本舞台を観劇するならこの言葉を頭に置いて劇場へ足を運んでほしい。

本舞台は1948年、夜の23番市で記憶少女の女の子と遭遇するところからはじまる。ローズ・灰原ウェイン・上寺の二人は女の子を保護し、ラプンツェルと名前を付けた。その後、彼女をヴェインの部下であるオリバー・チャールズ・ニーナと一緒に住まわせる。そして、ラプンツェルを含めた『ワンダリングドッグ』というチームを結成し、ローズを守るための任務を遂行していく。

ここまで聞くと、よくある2.5次元舞台と思ってしまうかもしれない。それでは、最初の問いと物語にどのような関係があるのか。実はこの物語には、見ている人が共感できるポイントが含まれていた。

物語を通じて感じる現代の日本との共通点

まずは本作のヒロインであるラプンツェル役を演じる澤田真里愛。次に、ラプンツェルと共に行動を共にするオリバー・織部役・西野太盛、ニーナ・蜷木役・藤本結衣、チャールズ・茶谷役・原野正章の3人。そして、4人が守るローズ・灰原役・茜屋日海夏、四人のボスのウェイン・上寺役・石渡真修が物語の中核をなす。

物語の日本では、戦後に中国からの圧力で日本人労働者や人々が苦しい生活を送っていた。働きたくても仕事がない、仕事を見つけても賃金が安くて毎日の生活が大変、日本製の商品が高いため商いを続けるのが難しいなど、日本人が抱える悩みであふれている。そんな日本人の苦難の状況を打破すべく、23番市を取り仕切るローズは日本人のための制度を作ろうとしていた。

本作では戦後の日中間のやり取りが描かれており、実際に私たちが生活している点においても注目できるポイントがある。日本独自の文化とも言える日本製品を作る技術、量産して多くの人たちに安く売る中国製品。どちらが正しい選択肢なのかを聞いているのではなく、今の日本が抱えている問題が舞台上で描写されているところだった。

今回、ピックアップされた商品は”醤油”。物語では、戦後の日本で醤油を作って人々の手に売られ、笑顔で満たされる場面がある。敗戦したことにより、自国の商品を作ることすら難しくなった日本。さらに、安い中国製品も販売されて、商人にとっては作るだけでなく、継続して商売を続けることが難しい経済状況を表現していた。

ローズがラストに叫んだセリフはこれからを生きる若者へのメッセージ

物語の最後で中国からの経済圧力をかけられ、日本人が中国人に対して膝を屈してしまう窮地の場面が繰り広げられた。中国人の会談相手の王元洪は、自分たちに有利な条件を持ち出し、日本人の生活を脅かす契約をローズに持ちかける。しかし、ローズはテーブルに注がれたワインを書面に落とし、中国の申し出を全面的に拒否した。王は日本に対して武力行使を執行しようとするが、ローズが各番市を統括する組織と協力して、中国からの圧力を退けることに成功する。

激怒する王に対して、これまで毅然とした態度で話し合いをしていたローズが声を荒げて、次世代の若者たちに日本の未来を託す誓いを言い放った。

“これからの時代を生きる若者”

この言葉は、昨今の政治や選挙などでしばしば耳にした人もいるかもしれないが、未来の日本を担うのは若い世代だと分かる。このシーンは今の日本だけでなく、世界情勢を見ても共通しているように感じた。時代背景をもとに、客席に座る観客へメッセージが送られる。

アクション・演出と併せて、もう一つの視点で楽しむ『進戯団夢命クラシックス』の舞台

2017年の日本は物価の上昇や各国の関係値など、様々な問題が取り上げられている。上記の内容だけでも思わず自分たちの生活に置き換えて見えてしまう。

本作の脚本・演出を担当した伊藤マサミはこの点にどのような考えがあったのか。観劇している最中にも関わらず、思わず考えてしまう筆者がいた。舞台の演出やキャストたちのアクションなど、クオリティの高い演劇に、舞台の上に立つメンバーの気概が伝わってくる。しかし、それと同時に本作から観客へ何を感じ取ってほしいのか、脚本のメッセージ性も伺うことができた。

もし本舞台を観劇した人やこれから足を運ぼうとしている人がいたら、キャストたちの演技と一緒に物語のテーマについても注目してみてはいかがだろうか。そうすれば、人それぞれの感じる想いや感想、そして役を演じるキャストたちの考えやストーリーに込められたメッセージ、見た人それぞれが感じた答えが発見できると筆者は思う。

舞台情報

≪公演情報≫
2017 年12月
6日(水)18:30
7日(木)13:30/18:30
8日(金)13:30/18:30
9日(土)13:30/18:30
10日(日)12:00

≪劇場情報≫
ラゾーナ川崎プラザソル[リンク

≪イントロダクション≫
1948年、夜の23番市。ローズとウェインは人買いの男たちから追われている少女と出会った。
少女を救ったローズたちだったが、彼女は記憶喪失状態だった。
ラプンツェルという名前を与えられたその少女の面倒を見ることを任された、落ちこぼれ三人組のオリバー・チャールズ・ニーナ。
ラプンツェルが加わり「ワンダリングドッグ」を結成し、徐々に頭角を現していくが、ラプンツェルの記憶には、ある重大な秘密があった・・・。

架空の戦後の日本を舞台にそれぞれの思惑が交錯する。

≪公式ホームページ≫
進戯団夢命クラシックス
http://shingidan.web.fc2.com/[リンク
進戯団 夢命クラシックス×07th Expansion vol.3 ROSE GUNS DAYS-Season2-
http://shingidan.web.fc2.com/rgd/rgd2.html[リンク

PHOTO:圓岡淳

野島 亮佑

オンラインライター/ニュース記者。ライブ・イベントレポートをはじめ、映画舞台挨拶、演劇・舞台レポート、アーティストや役者のインタビューを行っています。

Twitter: ryosuke_nojima