「私、義父と一線を超えてしまったの!?」下心むき出し!いきなり手を握ってきたオジサンのフェチ目線 誰にも言えないセクハラの悩み ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

「なんだか怪しいものを感じる」グサリと刺さる妻の釘

若き日の恋人、夕顔の忘れ形見の玉鬘。日に日に母親に似てくる彼女を見て、たまらなくなった源氏は思わず紫の上に話します。「不思議に人を引きつける魅力のある娘だよ。母親(夕顔)は大人しすぎるくらいの人だったけど、玉鬘は物事をよくわきまえて、しっかりしているから安心だ」。

その口ぶりから怪しいものを感じた紫の上は「なんだかお気の毒ね。あなたをそこまで信頼なさっていて。私だって、あなたをお父様かお兄様だと心から信じていた時期がありましたわ」。ギクッ!源氏は内心(鋭い!これはヤバイな)と思いつつ、「そんなことはない」と否定。その後も引き続き、足繁く玉鬘の部屋を訪れます。

「気持ち悪い!」フェチ目線で告白してきた義父に困惑

雨の上がりかけた初夏の夕べ、玉鬘は部屋でのんびりと、お習字をしていました。リラックスした表情、顔にかかる髪の感じ、頬の色……。玉鬘は見るほどに夕顔に似ています。

源氏は胸がいっぱいになりながら「初めて逢った時はこれほど似ているとは思わなかったが、最近あなたが時々母君に見えることがあるよ。夕霧は母親(葵の上)に全く似ていないから、そんなものかと思っていたが……」。

そう言いながら源氏は彼女に接近し「ずっと夕顔のことが忘れられなかった。あなたが同じ顔でここにいるのが夢のようだ。ああ、どうか私を嫌わないでおくれ」と、手を握ります。

男の人に手を握られたのなんて初めて。玉鬘は想定外の出来事に思わず(気持ち悪い!)。でも振り払うようなことはせず、おっとりと「母と同じとすれば、私の命も儚く消えてしまうかもしれません……」

どうしていいかわからず、打つ伏す玉鬘。源氏に奪われた白い手が震えています。ここで彼女の手を舐め回すように観察する源氏の目線がフェチっぽい。(キメの細かいきれいな肌だ……柔らかくて、ふっくらして、なんて可愛いんだろう)。うん、なんか、気持ち悪い!

テンションが上ってきた源氏は「私が嫌いですか。今の今まで私はあなたへの想いを隠して、誰にもわからないようにしてきた。義父としての愛情の上に、男女の更なる愛が加わる。いけないことだろうか。大きく深い愛情であなたを守ってあげられるのは私だ」。加わらなくていいよ、男女の愛!

源氏はくどくどと、お得意の口説き文句を垂れ流します。何やらエロ小説みたいな展開に、ナレーションも「何とも身勝手な理屈である」とツッコんでいます。というか紫の上にはバレてるよ!

すでに雨は上がり、空には月も出て、爽やかな風が竹林を渡ってきます。右近ら女房は親子水入らずの歓談と思い、気を利かせて離席中。

源氏はそれを良いことに、音も立てずに上着を脱いで玉鬘の側に身を横たえました。こういうときのために、衣擦れの音がしない柔らかいのを着て来ているあたりがプロですね。

玉鬘は怖ろしいやら情けないやら。(こんなことが明るみに出たら世間は何と思うだろう。実のお父様に引き取られていれば)と、こらえきれずに泣き出してしまいました。泣きたいよね!

「そんなに私が嫌なのか。辛いことだ。でもあなたが嫌なら、これ以上のことは絶対しない。ただちょっとこうして、私の気持ちの慰めになって欲しいだけだよ」。

源氏としては、一緒に横になっていると夕顔との時間が蘇ってくるようで感無量。でもさすがに軽率だったとも思うし、あまり長居すると女房たちも怪しむだろうと、今日のところは引き上げます。

「私のことを嫌いにならないでおくれ。私はあなたの母君が今でも恋しい。あなたもそのことを理解して、恋人らしい返事の一つもしてくれたらそれでいいんだよ。あなたの嫌がることは決してしないよ」。

死んだお母さんの代わりにオレが面倒見てやるから、ちょっと恋人プレイみたいなことして慰めてくれって……勝手すぎ。さすがの玉鬘も今回ばかりは返事もしません。

源氏は「冷たいね。今日のことは誰にも気づかれないように」と言い捨てて、帰っていきました。

義父と一線を越えた!?恋愛オンチの勘違い

取り残された玉鬘は茫然自失。まるで病気のようになってしまいました。というのも、既に22歳ではあるものの、彼女には”男女が結ばれる行為”が具体的に分からず、義父と一線を越えたと思い込んでしまったのです。

乳母達はひたすら真面目に彼女を育てたので、周囲で色恋沙汰を見かけたこともなく、よって性知識もない。それでこの年齢まで来てしまった挙句の大ショック、というわけです。22歳とはいえ、今の感覚だと+10歳位なので、当然知ってるよね?という所なんでしょう。

実際に起きたことは手を握られて、下着姿のおじさんに添い寝されただけ。一線を越えたわけではないのですが、恋愛オンチの玉鬘にはもう取り返しのつかない事態が起こった!と思えてしまった。いやいや、ホントはそれの100倍くらいスゴイことが起きるんだよ~、と教えてあげたい。

玉鬘の具合が悪いと聞いて源氏は細かく世話を焼き、見舞いの手紙を出します。なにも知らない女房たちは、濃やかな源氏の対応を絶賛。このあたりは同じく養女の秋好中宮に言い寄ったときと同様です。

玉鬘は手紙など見たくなかったのですが、周りが返事をかけというので、しぶしぶ中を見ました。

白い紙に、いかにも真面目な字で「本当に結ばれたわけでもないのに、あなたはどうして悩んでいるの?心が幼いですね。女房たちはどう思っているでしょう」。ニヤニヤしながら書いているのが目に見えるよう。何よ、全部あんたのせいよ!!

こんな手紙に返事なんかしたくない。でも書かないのもおかしいので「お手紙拝見しました。体調がすぐれませんので失礼致します」。それも事務用のつまらない紙に書いて、そっけなく突き返しました。

源氏はそのやり方に「なかなか手応えがあるな」とかえってニッコリ。素直になびくよりも、こういう攻略しがいのある困難な恋に燃える性格が煽られます。ああ、逆効果。

まるで蛇の生殺し、誰にも言えないセクハラの悩み

告白したことで勢いがついた源氏は、以前よりもしげしげと、女房たちの目を盗んでは玉鬘に言い寄るようになりました。あくまでも一線を越えずに、あれやこれやと甘い言葉をかけ続けます。

玉鬘は源氏をやり過ごしながら、誰にも言えない悩みを抱えます。あの大夫の監とは比べ物にならないけれど、イヤなものはイヤ。(どうしてこんなことになるの。実のお父様なら、たとえ大事にしてくれなくてもこんなことはなさらなかったはず。何より、お母さまが生きていてくださったら……)。

この状況は「セクハラされてるけど誰にも言えない」若い女の子そのもの。ストレスで体調も良くならないし、何より「夕顔の代わりに」って言われても、私はお母さまじゃない!義理の親子関係、源氏の外面の良さ、誰にも打ち明けられない苦悩。まさに蛇の生殺し状態です。

一方、オジサンとなった源氏は、若い頃とは違った”寸止め”の愉しみに浸っているようです。一気に自分のものにするわけではなく、ジワジワ言い寄って反応を伺う。相手がおぼこいのでこれがまた可愛いし、たまらない。ウヒョヒョヒョ!中年らしいネチっこさが出てきたなぁ、と思わざるを得ません。

もともと明るく親しみやすい玉鬘は、悩みを抱えて真面目にしていても魅力が損なわれることもなく、愛嬌がこぼれ出るようです。なんというアイドル体質。こうして(源氏がこんなイヤらしい事をしているとも知らず)玉鬘への求婚は、ますます加熱していきました。

「お望みどおりにしてあげよう」人の恋路を弄べ

梅雨に入った頃、数多の求婚者の中から兵部卿宮と髭黒にGOサインが出ます。と言っても、ほかの候補者よりは身分も高く、結婚相手として検討しなくもないかなぁ?という曖昧なもの。まあ、君たちは次のステップに進んでもいいよ程度の感じでしょう。

もとより惚れっぽい体質の兵部卿宮の訴えはいよいよ性急です。結婚には相応しくない梅雨になったのを恨んで「少しでいいから、どうか姫君にお近づきになるチャンスを!」と嘆願して来ました。

源氏はそれを読んでニヤニヤと「ではお望み通りに、日時をセッティングしてあげよう。彼の恋の訴えを聞くのはロマンチックだろうねえ。そっけない態度は取らず、時々返事をしなさい」。真剣になってる人を弄ぶのは楽しいでしょうね、人が悪いったら。

玉鬘は干渉してくる源氏が嫌でたまらず、気分が悪くて書きたくないと拒否。仕方なく代筆ができそうな女房を連れてきて、一言一句教えて書かせます。

源氏に言い寄られるようになってから、玉鬘の心にも変化が生じていました。このまま源氏のもとで怪しく言い寄られるよりは、兵部卿宮と結婚して六条院を出ていったほうがいいかも、と考えるようになったのです。

兵部卿宮に好意を抱いているわけではありませんが、さも心が惹かれたような返事を書いて進展させていけば、自然にここを出られる。そう考えたのでした。でもその返事を源氏に読まれてニヤニヤされたり、あれこれツッコまれるのは嫌だよね。

兵部卿宮は、意外にあっさりOKが出たことに大喜び。曇り空の夕暮れに、ひそやかに玉鬘の部屋の前にやってきました。すべてが筒抜けで、まさか自分の恋路が弄ばれているとも知らず……。いよいよ源氏の恋愛バラエティの本番です。

簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。
3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html
源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/

こんにちは!相澤マイコです。普段、感じていること・考えていることから、「ふーん」とか「へー」って思えそうなことを書きます。

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