舞台『プリズム・ナナ』ナターシャ役で初の役者デビュー シンガーソングライター・みきちゅインタビュー「本当に一からのスタートでした」

高校二年生で、フリーのシンガーソングライターとして活動を開始した”みきちゅ”。仙台のライブハウスでピアノの弾き語りを行いながら、自作のCDを流通させる。さらに、Twitterやブログを駆使し、自らオリコンや全国CD販売店に連絡して、アーティストとしての活躍の場を作っていった。自身の名前が知れ渡り、遂には全国のイベントに出演するまでに到達。ディアステージに所属してから、舞台『まじかるすいーとプリズム・ナナ ザ・スターリーステージ』にナターシャ役で出演するなど、音楽以外のジャンルでも自身の名前を広げている。そこで、舞台出演を終えた彼女に、これまでの経歴や役者として舞台の上に立った心境についてインタビューを敢行した。

アイドル、シンガーソングライターとして活動してきたこれまでの経緯

――みきちゅさんは現在のシンガーソングライターとしての活動だけでなく、アイドルとしても名前が知られていますね。

みきちゅ:最初はバンドをやろうと思っていたんです。だけど、メンバーが集まらなくて、ソロ活動に変更しました。そこで、地元のライブハウスに電話して、ピアノの弾き語りをさせていただいたんです。当時、私はAKB48さんが大好きでしたので、何か自分でもアイドルの取り組みをしてみたいと思っていて、”アイドルシンガーソングライター”として、作詞・作曲するアイドル活動を始めました。

――そこから、みきちゅさんの伝説が綴られていくわけですね!

みきちゅ: 伝説というのは恐れ多いです(笑)ただ、私自身、たくさんの人に聞いてほしいと思っていたので、私しかやっていないことをしてみたいと考えていたんです。でも、当時はフリーランスのアイドルが少なく、活動にも限界を感じていて「どうすれば大きいステージで歌えるようになれるんだろう……」と、思い、一つの手段としてオリジナルのCDを、オリコンさんやCD販売店さんに電話をかけて、自力で流通を開拓しました!

――いきなりの展開ですね(笑)

みきちゅ:芸能界のことについて、身近に知っている人が誰もいなかったんです。なので、自分で調べてアクションを起こしていました。だけど、電話をかけても軽くあしらわれてしまうこともあって、大変でした。

――親御さんのご協力などはなかったんでしょうか?

みきちゅ:なかったかな?(笑)そもそも父親の教育方針が「自分がやりたいと決めたことは自己責任でやりなさい!」というものだったので、自分でなんとかしなきゃと自然に思って活動していました。いま振り返ってみると、家族のスタンスに感謝しています!

――2014年に『アイドルの秘密』というシングルをリリースして、オリコンランキングでデイリー9位にランクインしたとお聞きしました。

みきちゅ:そうなんです! 実はこの曲、クラウドファンディングで制作した一曲なんです!

――クラウドファンディングですか!? 当時では珍しい方法ですね!

みきちゅ:次のシングルを良いものにしたいと思っていましたが、一人で全てを賄うには資金が足りなくて悩んでいた時に、「クラウドファンディング」いうものがあると紹介していただきました。応援してくれる皆さんに力を借りて夢をかなえられる手法ということで、不安もあったけれどチャレンジしてみようと思いました。

――チャレンジ精神が旺盛ですね!

みきちゅ:クラウドファンディングは、今でこそ当たり前の手法ですけれど、大変なことも色々ありました。だけど、大好きな西川進さん(涼宮ハルヒの憂鬱『God knows…』などを演奏しているギタリスト)に弾いていただき、一つ夢を叶えられた瞬間でした! 他にもたくさんのこだわりを詰め込んだので納得のいく1枚が完成したと思います! 集まった資金より、少し足が出てしまいましたが……(笑)

――その結果として、デイリー9位は努力が報われた瞬間だったのではないでしょうか?

みきちゅ:フリーとして制作する最後の一曲にするつもりだったので、結果を見たときはすごく嬉しかったです!

――そこから上京するわけですが、それからの活動は順調だったんですか?

みきちゅ:上京に当たって初めてお世話になった事務所があったのですが、所属してすぐにスタッフさんが入れ替わったり、悲しいことが続いたりして、このままでは今までファンの人と作り上げた「みきちゅ」とは違う道になってしまうと思い、一度活動休止を決意しました。ファンにも悲しい思いをさせてしまったので、ディアステージに移籍して、みきちゅを再開できるとなった時はうれしかったです。

これまで支えてくれた人たちやディアステージの大切な繋がり

――ディアステージに所属してから1年近くになりますが、あらためて活動の変化についてお聞かせください。

みきちゅ:まずは、私のことを知ってくれた方が増えました! ディアステージ主催のイベントでたくさんのお客さんを前にして、歌をうたわせていただきました。他にも二ヶ月に一回くらいのスパンで、秋葉原ディアステージで店舗イベントを開催させていただいて、直接ファンの方とお話ができる機会があったので、名前だけじゃなくて私自身を知っていただけたのが嬉しかったです!

――そういえば、みきちゅさんって所属アーティストの方からはどのような方だと言われていますか?

みきちゅ:「……変わってるね」と言われます(笑)

――ファンの皆さんからの評判はいかがでしょうか?

みきちゅ:いま思うと、いただいたツイッターのリプライで「みきちゅさん、変わっている人ですね」と言われることはありました。「ギャップがあるね」とか(笑)

――(笑)でももしかしたら、そのギャップもみきちゅさんの魅力なのかもしれませんね。YouTubeで公開されている『mevius』を拝見したのですが、歌うときの表情や身振り手振りに情感が込められていました。この表現方法にもみきちゅさんなりのこだわりがあるのでしょうか?

みきちゅ:もともと歌って踊れるアイドルとして活動していたんです。だけど、やっぱり音楽で人と共感することは忘れませんでした。耳に心地よいだけの言葉は右から左に流れてしまうだけなので、そうではなく、意味のある音楽を届けたい。夜に寝る前とか、落ち込んでいるときに聞いて、一緒に気持ちを共有できる音楽を届けられたらと思っています。

――聞いている人のことを深く考えていらっしゃいますね! それがライブでも活かされていると。

みきちゅ:そうですね! ライブでも雑味がなく、紛らわしくない雰囲気を作りたい気持ちはあります。『mevius』は振り付けがない楽曲なので、ライブ動画を見た人に「見応えがあった!」と、言っていただけると嬉しくなります!

――一度見たら忘れないステージを見られそうです!

みきちゅ:今日のライブしか聞けない曲があったとか、ステージに立つ人間として何かできることはないかなど、いつもいろいろなことを意識しています。

舞台初出演で見つけたアーティストと役者の違い

――先日、舞台『まじかるすいーとプリズム・ナナ ザ・スターリーステージ』に出演しましたが、ダブルキャストの齋藤彩夏さんの演技で何か実感したことはありますか?

みきちゅ:今回、私たちだけがダブルキャストだったので、いつもお互いの演技を見ていました。さらに、私は舞台出演自体がはじめてでしたので、先に彩夏さんの演技を見て勉強しました。

――ある意味では、齋藤さんの演技があってこそ、みきちゅさんのナターシャが完成したことにもなりそうですね!

みきちゅ:それはありますね! 彩夏さんのナターシャから自分のナターシャが形成されていきました。

――実際に舞台を拝見しましたが、みきちゅさんの情感あふれる要素がナターシャから伝わってきました。これまでの経験が活かされたという感じでしょうか?

みきちゅ:「今までの経験が活かされた部分」と「活かすことができなかった部分」があるかなと、思います。

――そうなんですか!?

みきちゅ:稽古場では、自分なりに考えてナターシャを演じたんですけれど、演出家の松多壱岱さんの思うナターシャを演じきれなかった悔しさを感じました。「今までの経験」をうまく活かすことができなくて、本当に一からのスタートでした。ただ、本番を迎えナターシャとしてステージに立った時に「ステージの魔物」というか普段ステージに立つ時に感じる感覚が舞い降りてきて、稽古以上に熱く演じきることができたと思います。これは「今までの経験」が活かされた瞬間だったかなと思います。

――なるほど、壱岱さん怖かったですか?

みきちゅ:怖かったときもありました(笑)。今回の舞台で厳しく壱岱さんから演技の指導をいただき、本当に成長できたと思います。一番に感じたことは、壱岱さんは他の人では考えられないような「クリエイティブ」なことを創造できる方だと感じて、学ぶことが多かったです、是非また壱岱さんの演出で舞台に立ちたいです!

――舞台経験を通して、新たなみきちゅさんを見ることができそうです!

みきちゅ:期待に応えられるようにがんばります!

――もし、また舞台に挑戦する機会があったら、どんな役にチャレンジしてみたいですか?

みきちゅ:ナターシャとは真逆の楽しい役とか、ヤンキーの役も演じてみたいです!

――ヤンキーは意外です!?

みきちゅ:女子高生の役より、自分のイメージとは違うキャラクターに挑戦してみたいと思っています(笑)

信頼できる仲間とスタッフたちで歩む新たなアーティスト活動

――みきちゅさんはディアステージに所属するアーティストの方に楽曲提供も行っているとお聞きしました。実際に曲を作る際はどのように作詞・作曲をしていますか?

みきちゅ:秋葉原ディアステージには『ツキイチ!』という毎月一回行っているイベントがあります。そこで働くディアガ(キャスト)たちがオリジナル曲の獲得の権利をかけて、歌で競い合います。普段から頑張っている姿を見ていて、一位になった女の子にとっては大切な楽曲になるので、長く歌い続けられるように気持ちを込めています。

――その人ならではの楽曲を作るということですね。具体的にはどのようなことをしていますか?

みきちゅ:まず本人と会話をして、どういう曲がいいか案をもらいます。さらに、ステージで歌っている情景を見て、私なりに輝けるような要素を織り交ぜています。

――今のところ、何か反応などはありましたか?

みきちゅ:楽曲提供した子のファンの方からお礼を言われました! 「最高の曲をありがとう!」って言っていただけたときは、ホントに嬉しかったです!

――ファンの人からコメントがあるなんて、珍しいですね!? ディアステージ所属前にも楽曲提供をされたことはあったんでしょうか?

みきちゅ:これまでにも何度かあります。ただ、作った曲が発表されないままグループが解散したり、曲がもらえて当たり前と思われたりしたことがありました。でも、ディアステージはクリエイティブな女の子の再出発できる場所でもあるので、ステージに立てることのありがたみをわかってくれる人が多くて、ホントに嬉しかったです!

――過去の経験があるからこそ、今の環境のありがたみが身に染みるといったところでしょうか。

みきちゅ:アーティストだけじゃなく、ファンの方たちにも喜んでいただけるたときは、すごく幸せでした。

――ちなみに、マネージャーさんやスタッフさんとはいかがでしょうか?

みきちゅ:雰囲気がすごく良いスタッフさんばかりです。スタッフさんとのやり取りも楽しくて、困ったときには相談にも乗ってくれます。奇跡の事務所じゃないでしょうか!

――アットホームなファミリー感のある事務所という印象を感じます(笑)

みきちゅ:イベントなどの規模が大きい分、私たちよりも早く来て準備をする姿を見ると、楽しいだけじゃなくて、すごく信頼できる人たちだと思っています。

――とても貴重なお話をありがとうございました! それでは最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

みきちゅ:今回は、私のこれまでの経歴をお話しました。少しでもみきちゅがどういう人物なのか伝わったら嬉しいです。これからも歩みを止めることなく、前を向いて進んでいこうと思っていますので、最近みきちゅを知った皆さんからも応援していただけると励みになります。これからもどうぞよろしくお願いします!

[撮影:野島亮佑]

※Twitter、YouTube動画はアーティスト、公式動画チャンネルから引用

野島 亮佑

オンラインライター/ニュース記者。ライブ・イベントレポートをはじめ、映画舞台挨拶、演劇・舞台レポート、アーティストや役者のインタビューを行っています。

Twitter: ryosuke_nojima