キリン『一番搾り』がリニューアル! 本当に変わったのか? 新旧を飲み比べて浮かんだ形容詞


堤真一と満島ひかりが新しくなった『一番搾り』を飲んで、「味違う!」とか「あ、ほんとだ全然違う」とか驚くCMが流れているけど、「本当はそんなに変わらないんでしょ?」と感じた極度のビール好きライター、矢野(@beeressayist)です。
 
本当に「全然違う」のか? 新旧の一番搾りを飲み比べてみました。

フルリニューアルなのか? マイナーチェンジなのか?

それは突然やって来た。
 
ある日、ふと気付くとスーパーやコンビニで見かける『一番搾り』のパッケージが変わっていたのだ。

ラベルには
 
日本の繊細な味覚に合う、「澄んだ上品なうまさ」をぜひ、お楽しみください。
 
とある。これは「ちょっと何言ってるかわからないから、とりあえず買って飲んでみよう」と行動させるためなのではないか? と勘ぐってしまうくらいの思わせぶりな文章だ。

▲左が旧で、右が新。

反対側のパッケージはほぼ変化なし。このあたりの微妙な変化が「フルリニューアルとか言ってるけど、本当はマイナーチェンジを話題性のために大袈裟に言ってるんじゃないの?」という思いを最後まで捨てきれない大きな理由だった。が、問題は味である。

飲んだ瞬間、僕と妻から出た全く同じ言葉。

前置きが長くなったが、開栓しグラスに注ぐ。色はほとんど同じ。香りも明確な違いは感じられない。

本当に違うのか? 疑念を拭えないまま旧バージョンを実飲!
 
……うん、紛れもない『一番搾り』。
 
では、続いて、新バージョンを実飲!
 
……優しい!!!
 
そう、「優しい」という形容詞以外浮かばなかった。が、一人でテイスティングしていたので、自分の心のなかだけで「優しい!!!」と叫んでいた。そんな折、妻が通りかかったので新旧を飲み比べてもらった。すると、新バージョンを飲んだ後、なんと「優しい!」と吐き捨てるように発して去っていった。その後ろ姿を見て、これはもう「『一番搾り』は優しくなった」と結論付けて良いと僕は思った。
 
これまでの『一番搾り』にあった苦み、酸味、アルコールの辛み。その全てが弱くなっている。味に加えて、口当たりもソフトになった。そして、飲むと確かに「澄んだ上品なうまさ」という意味がわかる。特に「澄んだ」という部分。雑味がないから澄んでいる感じが確かにする。
 
一方で、「いやいや、その雑味とか複雑な奥行きのある味わいが『一番搾り』の個性だったんじゃないの!?」という余計な心配もよぎる。『一番搾り』原理主義の人にとっては、あるいは悲しいリニューアルかもしれない。でも、思うに今回の変化はほとんどの人にとっては好ましいものだ。何と言っても飲みやすくなっているのだから。今思うと、47都道府県で47通りの『一番搾り』を造ったのは、「一番搾り=不変」と信じる原理主義者が今回のリニューアルでショックを受けないよう周到に用意された伏線的プロジェクト、だったのかもしれない。

変わったところもあるが、変わってないところも。

そんな邪推はさておき、他に気になったのが泡立ち。

妙に新バージョンだけがもこもこ泡立って、なかなか泡が消えない。グラスの洗浄度合いが違ったのかな? とも思ったので、テイスティング用のプラカップにも入れてみた。

▲左が旧で右が新。

時間が経過しても、やはり新バージョンの方が泡がもつ。鮮度の問題もあるので一概には言えないけど、リニューアルの結果、付随して泡の持ちもアップしたのではないだろうか。これは嬉しい。泡は蓋の役割をして、酸化から守ってくれるからである。
 
「変わった変わった」と書いてきたけど、妻に旧バージョンを新バージョンだと偽って飲ませてみたところ、「やっぱり新しい方が飲みやすいね」と旧バージョンを飲んでいるにもかかわらず豪語していたので、やはり基本は同じようだ。
 

「あ、ほんとだ全然違う」は大袈裟ではなかった!

さて、答え合わせのようにキリンのプレスリリースを読むと……

麦のおいしいところだけを搾る「一番搾り製法」をベースに、麦汁濾過工程における濾過温度をより低温にすることで雑味・渋味を低減し、「麦のうまみ」がアップしました。さらに、酸味や甘い香りを抑制することで、より調和のとれた味わいを実現しました。
 
とある。麦のうまみがアップしたかどうかは正直、微妙なのだけど、やはり雑味、渋み、酸味、甘い香りといった諸要素を抑えていたことがわかった。
 
もしかしたらKIRINは、苦みが強くて雑味もあってビール好きが好む「ラガー」と差別化を図りたかったのかもしれない。ビールに慣れていない層からすると、ラガーも『一番搾り』も「かなり苦いビール」という点で同じくくりだったはず。今回のリニューアルで、一番搾りはビールビギナーでもスッと飲めるブランドに変わった。これは結構大胆なことをやったな~と思う。
 
結論。
 
・『一番搾り』は優しくなった。
・「あ、ほんとだ全然違う」は大袈裟ではなかった。
・でも、基本は一緒。
 
新旧がまだまだ入り混じっている今宵、あなたも飲み比べをしてみては?

矢野 竜広

1980年生まれ。東京都出身、妻の故郷である鳥取県に移住したライター、ビアエッセイスト。 立教大学を卒業後、広告制作会社勤務のコピーライター、事務所所属の構成作家を経てフリーランスに。愛してやまないビールを、飲むだけではなく学びたい!と数々の講座を受講。ビアバー巡りにも勤しむ。そんな大のビール好きが高じて、『ビールの図鑑』(マイナビ、2013)、『日本のクラフトビール図鑑』(マイナビ、2015)の執筆に携わり、地ビール会社にも勤務。NHK文化センター(鳥取教室、米子教室、梅田教室)でビール講座の講師を務める。その他著書に、詩集『そこに日常があった。』(文芸社、2002)、『・ツナ缶×1』(Kindle版、2014)、『「結ぶ」と「築く」~鳥取・大山町の移住者たちが挑んだ婚活事業~』(∞books、2016)。趣味は一人旅、ノンフィクションの書籍を読むこと、ドキュメンタリー鑑賞。

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