姫路とロンドンを繋ぐ明珍火箸の音色

  by あおぞら  Tags :  

海外で活躍する芸術家は多い。日本人としての本質を見失わずに、日本人としてしっかり生きることが海外において砦のような気がする。住む国にかぶれてもいけない。ましてや日本語をおろそかにしてはいけない。海外に生活することにより、より日本人らしくなっていくような気がする。

さて、昨日生まれて初めて『明珍火箸(みょうちんひばし)』と言う言葉を知った。最初はどう読むのか一瞬戸惑ったくらいだ。なぜこの言葉を知ったかと言うと日本の友人がBBCのサイトを送ってきてくれ、そこにロンドンで活躍されるピアニストの小川典子さんの動画があった。小川典子さんの凄さはニューヨークの名門、ジュリアード音楽大学に進み、複数の国際コンクールに入賞後、拠点をロンドンに移されて活躍されている誇らしい日本人である。

一体何の繋がりがあるのか……だ。

勿論あるのである。小川典子さんが明珍火箸をピアノの上において、ピアノと明珍火箸の涼やかな音色と共に演奏するのである。私はこのコラボレーションに感動すると共に、日本人としてしっかりロンドンに根ざして日本を取り入れた音楽を作り上げた小川典子さんの感性に驚くのである。

日本人はとかく欧米を真似したがる。日本のポップミュージックはよくぞここまでの『類似品』と思えるものがいくつもある。日本人は欧米を仰ぐのでなく、日本人の伝統で勝負した方が一番正当な勝負の仕方だと思う。

その『明珍火箸』は日本では姫路の明珍さんしか作っていないと言う。52代目の明珍さんが火箸を刀を作る同じ工程で作っているのである。火箸を作る材料は刀と同じ。火箸でありながらその音色に引き込まれる。

付け焼刃で昨日早速明珍火箸を調べてみたら、この音色を音楽に取り入れたいと思っていたミュージシャンにスティービー・ワンダーがいた。明珍火箸の音色はアナログ録音では当時不可だったために諦めたそうだが、盲目のピアニストのお眼鏡にかなう明珍火箸の音色を昨日の昨日まで知らなかった自分が恨めしい。

日本人として、日本の良きものを知らなさすぎた。友人がBBCのサイトを送ってくれなければ、もしかしたら一生明珍火箸のことを知らずにいたかもしれない。

姫路とロンドンが明珍火箸により結びついた。知らないことを知るには偶然も必要だが、雑事ばかりにかまけているのでなく、もっと感性を磨いて特に日本の職人について学ぶべきだと静かに反省した。

画像: from flickr YAHOO!
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