関西のディープゾーン『遊郭・松島新地』に、愛する妻と1歳児、新生児と住んでみた~最終回~

松島新地での生活、ドヤ街のような九条&西九条近辺にある病院での出産、そして飾り窓のような遊郭女子との交流……ディープ大阪に染まれない自分にやきもきしながら過ぎ行く時間。しかし、この地では、さらに恐ろしいことばかりが起きる。

まさにオカルト地帯、ほんとうにあった怖い話もしっぽを巻いて逃げ出すようなことばかりが連日連夜、欲求不満の熟女妻のようにうんざりしている私を責めたてるのだ。

マンションの自転車置き場でヤってる2組

松島新地での生活は正直眠れない。大阪に住んで仕事をしていると、毎日刺激的な光景が目に飛び込んでくる。鮮やかな原色の看板、チカチカと点滅する電光掲示板、下世話なコピーや性衝動をおこさせる店の多さなどなど、自分の中にある静かな欲求に毎日ささくれをつくられているようなものだ。

朝の日課になっていたのは、近くのハンバーガーショップへの朝食の買い出し。
折り畳み自転車で、いつも通り出発しようとすると、マンション内にある自転車置き場からおかしな声が聞こえる。
男と女。しかも男女が2組、4人もいる。
人が朝マックしようとしているのに、朝6時から朝ファッ◯している輩がいようとは……アッホか!

絡み合っているカップルそばまで、忍び足。のどを潰すような声で、怒鳴った。

「こんなところで、エッチしたぁぁアカンよぉぉぉ!」

地元の応援団団長のような大声に4人の男女は、
「うわわわわぁぁぁ~!」と逃げ惑い、ひとりはずり下げたズボンを引きずったまま、マンションを飛び出し、無惨にも道路にころがった。派手派でしい女たちはバッグを抱え、全力疾走。この男も連れて行ってやれよ~

連日巻き起こる騒動の数々

非常識もほどがあるエリアでは、その他こんな連中をみた、こんなことも起こった。

・遊郭が12時に終わると、地域一帯黒塗りの高級車がやってきて裏社会の人だらけになる(ちらっとでも見ると睨まれる)

・地味な感じで電車などで出勤してくる女の子が店に立つと、パッと華やかに映る

・なぜか事故ばかりが起きる交差点があり、住んでいる間だけでも30回以上人が轢かれていた

・紙を持参で近所のマンション前でウンコをしているジイさんがいた

・商店街の衣料品店で商品と自分の着ている服を着替えてそのまま帰るバアさんをみた

・スーパーで六甲おろしを歌っているオヤジが万引きで本気の店員にボコられ、蹴られていた

・商店街に行くと誰とも話していないのに携帯電話で怒鳴っている人が3人はいる

・1週間に一度は女性が夜道で襲われていると交番で注意喚起を行っている

・近所に電波系の看板(謎の文言が書きなぐられたもの)を掲げるお店が数件ある

などなど、まったく掴みどころがないというか、常識が通用しないエリアである。

巻物の寿司だってこの通りだ。
洲巻を使わずに、我が手のみで巻いてるんじゃないか、なと思うほどのポンコツクオリティーである。

松島新地に移住し、9ヶ月が経過したころ、自分の体に変調が出はじめた。
体中にひどい蕁麻疹が出て、原稿仕事をしながら、精神に異常をきたしてしまったのだ。
ただただ、仕事の時間以外はぼんやりとして、一歩も外に出たくなくなってしまった。

心配した妻は、ひと言…
「もう京都にもどった方がええんちゃう? あんまりここの空気が合わへんのやと思うよ」

こうして乳飲み子を抱えた我が家は、地元に戻ることにした。

ここで、釈明しておきたいのは
これは決して“松島新地”という場所が悪いというわけではない。
精神力が弱く、外の空気を感じ取りやすい丸野裕行は合わなかった…ただそれだけだ。

家族と住まう環境…次は、大阪のさらなるディープゾーン“飛田新地”に住んでみよう!
(๑´ڤ`๑)テヘペロ ♡ (終)

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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