シワを改善する化粧品戦争勃発!? 本当に買うべき化粧品はどちらかを考察する

今年1月1日にポーラより発売された『リンクルショット メディカル セラム』。「シワを改善する」との表記が厚労省に認められた初めての化粧品だが、発売から1 カ月で販売計画を超過する約25万個、約36億円の販売実績となり、好調だという。年間売上目標である100億円に向けて好調に推移しているなか、ひとり勝ちは許さんとばかりにその好調ぶりに待ったをかける企業が出てきた。化粧品市場の雄、資生堂だ。資生堂は、6月21日に満を持して、『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S』を発売した。こちらも「シワを改善する」との表記が厚労省から認められた化粧品である。今回は、このシワ改善化粧品の覇権を争うガチンコ対決が繰り広げられるなか、どちらの化粧品を買うべきかを考察してみた。

まず初めに、両者のスペックの確認をしてみる。ポーラ『リンクルショット メディカル セラム』は、20gで税抜1万5000円の美容液。12週間で7割の方の目尻のシワが改善し、シワの深さは最大34%改善するという。一方の資生堂『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S』は、15gで税抜5800円のクリーム。9週間の使用でシワグレード4レベルの深いシワを改善するという。1gあたりの金額で比較すると、『リンクルショット メディカル セラム』が『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S』の約2倍で、使用期間も『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S』が3週間ほど短く、一見すると『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S』の方がコストパフォーマンスが良いように見える。本当にそうなのだろうか?

使用期間については、あくまでも厚労省の承認を得るために実施した抗シワ評価試験の実施期間の違いであるはずで、単純にこの効能表記上の期間の長短で比較するのは早計だ。また、販売価格についてもこれだけ開きがあるということは、何か効能の決定的な違いがあることも考えられる。その可能性について少し丹念に調査してみた。

まず、『リンクルショット メディカル セラム』のシワ改善メカニズムを紐解いてみる。元をたどると、紫外線や加齢によって真皮のコラーゲンやエラスチンが減少し、シワが生成されることはこれまでも知られていたものの、なぜ生成されるかまでは突き止められていなかった。そうした中、キズなどの部位に集まる“好中球”が放出する“好中球エラスターゼ”がコラーゲンやエラスチンなどの真皮成分を分解することが、シワの原因の一つとなっていることが世界で初めて発見される。その研究結果を起点に、“好中球エラステーゼ”の真皮成分分解をブロックする“ニールワン”というポーラ独自の医薬部外品有効成分を開発し、それを真皮まで届くように製品化したものが『リンクルショット メディカル セラム』であるという。

一方、『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S』は、加齢による角層の水分保持機能の低下、ターンオーバーの乱れなどで肌の潤いが不足すると肌が硬くなって、特に動きの激しい目元や口元に表情ジワができやすくなる状況に対応するもの。配合された“純粋レチノール”が、表皮角化細胞でヒアルロン酸の産生を促進し、表皮内の水分量を高めて肌を柔軟にすることで、シワを改善するという。

このように詳細に説明をしてしまうと、難しすぎて違いが全く分からないと感じるかもしれないが、両者は全くもってシワを改善するメカニズムが異なるようだ。端的にいうと、『リンクルショット メディカル セラム』は、真皮に発生するシワを“ニールワン”という独自成分で抑制するアプローチであるのに対し、『エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリーム S』は、“純粋レチノール”で角層を柔らかくして、表皮に発生するシワを改善するというアプローチの違いがある。すなわち、両者は、言葉にすると、“シワを改善する化粧品”ということで同じなのだが、改善する対象のシワの発生位置が“真皮”と“表皮”で全く異なるのだ。

この違いを念頭に入れたうえで、どちらの化粧品を買うべきかを改めて考えてみる。上述したように、販売価格については約2倍の開きがあるものの、そもそも両者は改善するシワの種類が異なるわけで、コストパフォーマンスで比較することはできないといえる。この販売価格の違いは、表皮に発生するシワを改善するのと、真皮に発生するシワを改善するのとでコストが2倍違ってくるということを表しているに過ぎないのである。つまり、どちらが優れているということは結論付けられないのだ。ここまできてこのような玉虫色の決着となり申し訳ないが、“どちらの製品も使ってみる”というのが最適な答えなのかもしれない。

執筆:考察してみました

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