ペット虐待シリーズ!「別荘地の捨て犬」問題について

  by maverick  Tags :  

山梨県に点在する別荘地。夏の避暑地としても有名な清里や小淵沢には、その表の顔とは違うもう一つの顔がある。
それは「捨て犬」。
別荘地と捨て犬という組み合わせに驚きを隠せなかったが、私たちの知らない所で、その数は増えているという。
今回、動物虐待として社会問題化しつつある「別荘地の捨て犬」に焦点をあて、その里親さんのエピソード、奮闘をご紹介する。

里親さん:Iさんの場合

Iさんが「ウラン」のことを知ったのは、たった一枚の張り紙であった。よくある「里親募集」の張り紙だ。

夏の初めに知人から「ゴールデン・レトリバ-の里親募集の張り紙がある」と聞いたIさんは、すぐに見に行き、その場で里親を申し出たという。

「でも、まだ別荘地の山の中を徘徊中でこれから保護するって言われたんです。」
こう聞いて里親を諦める人もいるだろう。
でも、Iさんは違った。

「早く保護してあげて欲しい」・・そう思ったというのだ。
この時点ではウランの性別や年齢は何もわかっていない。
高齢かもしれないし、もしかしたら重病を持っているかもしれない。
それでもIさんは「気にならなかった」と言う。

「歳をとった子であっても、1年でも2年でも一緒にいてあげられたら・・」と里親になることを決めたと言うのだ。

Iさんにとって、ウランは初めての犬ではない。
これまでにも近所の建築現場にいた、行き場の無くなった犬を何匹も引き取って飼っていた。
それだけに辛い経験をしているであろう、徘徊中のウランが気になり、里親になることを決意したのかもしれない。

そして、Iさんの家族はまだ保護もできていない成犬を飼うと決めたと聞くと、反対をするどころか全員がウランが来ることを喜び、早く来ないかと待ちわびたという。I家は全員犬好きなのだ。

Iさんが里親を申し出た後、山梨の愛護団体はウランの捕獲・保護活動を以前より積極的に行った。これまでに何百頭もの捨て犬を保護し、里親を探す活動をしてきている。

ゴールデンのような純血種は珍しいと思われるかもしれないが、長野(軽井沢)などの避暑地でも近年は純血種の捨て犬が増えてきているのが現実だ。

こうした徘徊犬の捕獲というのは、何度もやってきている愛護団体にとっても決して簡単なものではない。けれどもIさんが里親を申し出た数日後、ウランは愛護団体の熱意と行動力で無事に保護された。しかし、ここで思ってもいなかった問題が発覚した。
ウランは妊娠していたのだ。

飼われている間に妊娠したのか、捨てられてから妊娠したのかはわからない。
ただ、もうお腹の中の子は大きく、中絶するには危険を伴う状態であったためウランは出産をすることになった。

そして、Iさんは子犬がある程度育つまで引渡しを待って欲しいと言われ、やっと保護されたと聞いて安心したのもつかの間、ウランを引き取るのは延期されてしまった。
でも、それは決してマイナスではなかった。

ウランを引き取るまでの間にIさんは家族で話し合い、子犬と離されるウランのことを考え、せめて1匹でも子犬が一緒ならば寂しくないだろうと子犬も引き取る結論を出していたのである。

そして、張り紙を見てから約2ヶ月後、ウランは子犬1匹と3時間の道のりを経て山梨から東京都のIさん宅に来た。

ゴールデン・レトリバーという大型犬をいきなり2匹、それも1匹は成犬という組み合わせで里親を申し出る人はまずいない。自分たちがする世話を考えればそれが普通であろう。
Iさんは違った。

ウランのことを考え、ウランにとっていいと思えることを選択したのだ。その選択は間違っていなかった。
結果的にIさんは犬の世話にかなりの時間とお金を取られてしまっているのだが、「メロン」と名づけられた子犬が一緒にいることでウランは落ち着いているようにみえる。

「メロンばかり呼んでいると焼きもちを焼いて来るんですよ」と嬉しそうにわざとメロンを抱いて何度も呼ぶ。
まだI家に来て2週間だというのに、すでにウランは飼い主の関心を取り合うほど馴染んでいるのだ。
しかし、Iさんにはまだ気になることがある。

「棒を怖がるんですよ」
そう言うIさんの言葉からは、虐待されていた可能性を考えずにはいられない。

どれくらいの期間かわからないが徘徊していたことを考えれば、その間に棒を投げつけられることもあったのかもしれない。
もしかしたら前に飼っていた人に虐待されたことがあるのかもしれない。
そんなことを考えてしまうのだが、庭で家族と一緒にいる姿からは虐待など思いつかない。

そこには嬉しそうに走っているウランの姿がある。
呼ばれることが嬉しく、一緒にいられることが幸せかのような姿だ。

メロンと一緒に玄関から靴を盗んで持って行ってしまうこともあると言う。
でも、Iさんはウランを訓練所に出すつもりは無い。

「みんなでしつけていこうと思っているんです」そう言うIさんの表情には、子供のことを考えている母親の厳しさと優しさがあった。

決して甘やかす気は無い。必要なしつけは家族が教えていく。ウランに無理をさせることなく・・そう決意しているかのようだった。

犬を飼う人の数は年々増えている。でも、Iさんのように犬のことを考えて飼う人の数はさほど増えていない。それがウランのような捨て犬が無くならない理由のひとつなのかもしれない。

過去にあった悲しい出来事を背負っているウラン、それを理解し、暖かく見守りながら一緒に暮らしていこうというI家の家族。
ウランはものすごく幸せな犬である。

同じように飼い主に捨てられた犬達にとっては、愛に包まれて暮らしているウランは憧れの存在なのではないだろうか?

ウランのように無事保護されたとしても、全ての犬に幸運にも飼い主が見つかる訳ではない。
「幸せを掴めなかった」犬たちは、私たちの想像を超えて、実はたくさん存在しているのである。

今、動物愛護推進員に注目が集まっている。

捨て犬を減らすには、飼い主の意識改革が必須である。

その意味で、「動物の愛護、及び管理に関する法律」が改正された際に設けられた「動物愛護推進員」は重要な存在であり今動物愛護の世界で注目されている。

行政では動物担当の部門を設けていないところも多く、時間的にも制約があり十分に活動できないのが現状だが、動物愛護推進員はボランティアなため、特別な権限は持っていなくとも多くの飼い主に指導する機会を得ることができるのだ。

事実、東京や大阪、神戸など大都市では多くのボランティアに動物愛護推進員を委嘱し、飼い方指導や里親探し等の活動を繰り広げている。

そして、これらの献身的な活動は、実際の飼い主たちの注目を集めはじめている。

無計画な繁殖や犬を捨てる飼い主がいる一方で、このような愛護団体や行政からのアドバイスを得て、動物を飼うことの飼い主の責任などをじっくりと真剣に考え、行動する飼い主が増えてきているのだ。

そう考えると、もっと飼い主が犬を飼うということ、飼い主の責任などを自覚し、本当の意味でのコンパニオン・アニマルとして犬と暮らすようになるためには、飼い主の意識を変えるための時間が必要なだけかもしれない。

犬にとっての幸せ、それは私たち飼い主の心構えにかかっていることを、忘れずにいたい。

maverick

喧嘩上等。 ◆各種ご依頼などはこちらへ◆