そこはかとないラブ&ピース&レッドアース

  by タツキヨコヌマ  Tags :  

毎日世間には新しいものが垂れ流されていて、私もあなたも、みんながみんなエンターテインメントに無感動で慣れっこになっていると思う。

流行りを流行りと受け止めて、横目でチラッと見て終了。
人の心を癒したり、励ましたりするものは既に出尽くして飽和状態で全部嘘みたいだからかもしれない。

1月14日池袋admではいい大人がみんな揃って同じ方向を見て、大口を開けて、手を叩いて笑っていた。

ライブでのMCは大抵詰まらない。
音楽を聴きに来ている人間からしたら、うんざりする時間とも言える。
どうしてこんなに語るのか、どうしてこんなに格好付けるのか、お願いだから二度と口を開くな、演奏せよ、歌だけ歌え。
そんなふうに思ってしまう。

でも彼らは違う。
赤い地球からやって来た(らしい)フォークソングパーティ、レッドアースは違うのである。
演奏時間とMCの割合が物凄い。
全然曲をやり始めない。
無意味なお喋りを続ける。続けまくってようやく曲を始める。

でもオーディエンスは全然腹を立てずにニヤニヤして見つめているのである。
こんなバンド、とりあえず私は見たことない。
鬱陶しいMCにはことごとく厳しい姿勢を崩さない私もついうっかりニヤニヤしながらステージを見詰めてしまう。

そして、腹の底から笑ってしまう。

若い頃、箸が転がっても可笑しくて堪らなかった時代があった。そういう時代に戻って意味もわからず大笑いしてしまう。

そして笑っているうちに曲が始まる。
曲が始まったら、その時は思う存分かっこいい。

息を呑んで、笑えなくなってステージを見詰める。

そして理解する。
MCの時にいちいち格好付ける必要がないぐらいの全てを、伝えたいことのあれやこれを曲に込めているのだということを思い知る。

大人になって好きなことを好きなだけ好きなようにしている人はごくわずかだと思う。
妙な遠慮や我慢はしょっちゅうしなければならないし、生きていてなんの意味があるのか分からなくなる事もわりとある。

だけど大人だって優しくされたい、楽しませてもらいたい、笑わせて欲しいし、慰めてほしい。

薄っぺらい言葉とか、その場しのぎの言葉とか、そういう安っぽいやり方じゃなくて心から温まるやつ、それが欲しい。

そんな気持ちを満たしてくれるのがレッドアースだと私は思う。

大人は欲張りだから、かっこいい曲も聴きたいし、退屈もさせて欲しくない、無邪気に笑いたい夜だってある。
それ全部を、私たちにくれる。

そしてふと思う。
ただふざけているのではなくて、彼らは計算づくでこのライブのスタイルを続けているのではないだろうか。
ライブハウスにやって来た地球人たちをヘラヘラさせておいて、ガツンと凄い音で本気にさせてしまう。
笑ったり、真剣にステージを見つめたり、忙しいけど必死で彼らについて行こうとしてしまう。
こんなやり方をされたら油断できない。
目が離せないし、目を逸らせない。

彼らがステージに上がった途端に、知らない者同士が同じ方向を見て笑い、熱狂する。

誕生日の人がいたら、その場にいる全員でお祝いする。
しかしながら別にハッピーバースデートゥーユーを歌うわけではない。
ウサギさんはバニーという歌を歌うだけである。
ハッピーバースデーやおめでとうという歌詞は一切入っていない。
それなのに何だかんだみんなが一丸となって、誕生日の人を、見知らぬ誰かのことをお祝いする。
冷静になって考えると全く意味がわからないけれど、よく分からないうちにお祝いは完了しており、祝った方も祝われた方も全員が満更ではないような、満足そうな雰囲気だから不思議である。

だけどこれこそ、取ってつけたような言葉が無くとも、いい音楽に引き寄せられて偶然隣合った見知らぬ人同士が笑い合い、同じものを共有して楽しむことが出来るということの証明ではないだろうか。
鼻につく演出や説明が無くても、その場にいる人たちには彼らが伝えたいことは確実に伝わっている。
伝わっているからこそオーディエンスは、それをしっかりと受け止めて力いっぱい楽しむし、笑う。
言葉ではない何かにじわりと心を動かされて、訳もなくホッとしてしまう。

これはもう、レッドアースによる支配と言っても過言ではない気がしてくる。

だけど私は、こんなに愛のある支配ならばよいではないか、と思ってしまうのである。

そんなレッドアースが来る2月22日に『RED EARTH Ⅱ』を発売するとのこと。
アルバムトレーラーはなかなか始まらないが必見である。

加えて2月24日は心斎橋Music Club JUNUSにて『RED EARTH×レッドアース~やれんのか222人斬りワンマン〜』が行われる。

現在そのワンマンライブに向けての宣伝企画として『222km罰ゲームマラソン』なるものに挑戦中。
全く意味が分からないが、やっぱりちょっと笑えるので是非チェックしてみて欲しい。

その他バンド、ライブ情報はレッドアースHPにて↓↓↓
http://www3.hp-ez.com/hp/red-earth/page4

ちなみに私も少しだけ昨日222kmマラソンをチェックした。
ボーカルの寺澤ちゃんがただただ一生懸命走っていた。
画面がめちゃくちゃ揺れていて、見ているこっちまで酔いそうな臨場感溢れるものだった。
結局10km走るべきところを8kmしか走っておらず、第一走者の時点で非常に堂々とした八百長が起こっている。
こういうドラマが度々起こるのが彼らの魅力のひとつでもある。

決してライブの日だけレッドアースを気取るわけではないのだ。
彼らは常にレッドアースで、私たち地球人を1日たりとも寂しがらせたりしない。

ラブ&ピース&レッドアース、である。
窮屈で退屈な青い地球も悪くない、そう思わせてくれる彼らは赤い地球から来た救世主かもしれない。

タツキヨコヌマ

タツキヨコヌマ 1991.10.12生まれ 山口県出身。 ライター。 寺山修司、江戸川乱歩、ボリス・ヴィアンフリーク。 主にインディーズバンドの記事を執筆。

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