怪しいネットワークビジネスを追え! ~1

  by mexicona  Tags :  


 2015年の二月頃から『ネットビジネス』を商材とした『ネットワークビジネス』を展開しているとある団体(本稿では仮名として『NtBカレッジ』と記載します)がありまして、その実態が今まであまり見ることがなかった『マルチ商法』の形態のようで色々と調査をしております。
 この『NtBカレッジ』の実態を調べていく上で、『ネットビジネス』とか『ネットワークビジネス』とか似たような言葉がで出来ますので、まずは最初に少し言葉の関係を整理しておきましょう。
 
 
 
■『ネットワークビジネス』って?
 
そもそも一般の人は『ネットワークビジネス』という言葉自体、あまり聞き慣れていないかもしれません。正直な所、十年ほど前に私が初めてその言葉を聞いた時、正体がわからずに企業の情報システムの構築なんかをしているSI屋さんとか、インターネットなどのインフラ系企業のことを連想してしまった覚えがあります。これは私の浅学ゆえの大きな間違いです。
 
 調べてみると『ネットワークビジネス』というのは『特定商取引法』で厳しい規制を受けている『連鎖販売取引』と呼ばれる取引類型にあたる事がわかります。この『連鎖販売取引』というのですが、消費者庁が作っている特定商取引法を解説したサイトによると以下のような説明があります。
 

具体的には、「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」とか「他の人を勧誘して入会させると1万円の 紹介料がもらえます」などと言って人々を勧誘し(このような利益を「特定利益」といいます)、取引を行うための条件として、1円以上の負担をさせる(この 負担を「特定負担」といいます。)場合であれば「連鎖販売取引」に該当します。
 
実態はもっと複雑で多様な契約形態をとっているものも多くありますが、入会金、保証金、サンプル商品、商品などの名目を問わず、取引を行うために何らかの金銭負担があるものはすべて「連鎖販売取引」に該当します。

引用 特定商取引法ガイド:http://www.no-trouble.go.jp/search/what/P0204009.html
 
 
 いわゆる『マルチ商法』とよばれているものです。ピラミッド型の組織が有名ですが実際の組織の形には様々なタイプがあります。扱われる商材としては、健康食品や化粧品、洗剤や鍋などの調理器具から浄水器、布団や印鑑に至るまで様々な物が取り扱われています。


   
 この『マルチ商法』という言葉も定義が曖昧な様ですが、ざっくりと大まかなところを押さえようとすると『マルチレベルマーケティング』というのを取り入れた商法という事になるでしょう。もっとも『マルチ商法』を謳う悪徳商法が横行したせいで世間的に言葉のイメージが悪くなって来たので、現代では勧誘などで『ネットワークマーケティング』『ネットワークビジネス』『MLM(マルチレベルマーケティング)』『紹介販売』という様な別称がよく使われるようになっているようです。
  
参考 日本司法支援センター

MLM・ネットワークビジネスもマルチ商法です。

MLMとは何ですか?
商品・権利の販売形態をとりながら、販売組織の会員がリクルートを通して組織を自己増殖させ、下位の会員からの金員のバックマージンを受け取るシステムにより、ごく少数の上位の人が多大な金銭を手にする組織的な商法、マルチ・レベル・マーケティング(多階層販売方式)の略です。

引用 法テラス: http://www.houterasu.or.jp/service/shouhishahigai/multi/faq2.html
 
 
 
 何故こういう言葉の話から入ったのかというと、この「商品を購入した人が紹介者となる仕組み」というのは、一般企業でも行われている『口コミ戦略』などと類似点が見られますので、そこからミスリードを狙って「ネットワークマーケティングは大手の一般企業でも広く採用されている方法」という言葉で紹介したり、勧誘したりする場合がよくあるからです。

 ある程度の年齢の人ならば『マルチ商法』と言われると、すぐに悪徳商法として社会問題になった過去の事例を思い浮かべることが出来るかもしれません。そういう人にとっては、例えば「『マルチ商法』は大手の一般企業でも広く採用されている方法」と言われると、すぐにそれが「何かおかしい」と判断できる人も多いと思います。しかし、この『マルチ商法』の部分が『マルチレベルマーケティング』や『ネットワークマーケティング』といった言葉に置き換えられた途端、言葉を知らない人は判断がつかなくなるわけです。

 
 実はその昔、私はとある一般企業で『ご友人紹介キャンペーン』というのを担当していたことがあるのですが、普通の企業として『口コミ戦略』のスキームを検討する上で、まず最初に考えなくてはならなかったのが『連鎖販売取引』にならないようにするという点でありました。紹介者になって頂いた方にお礼を用意する場合も、金銭以外でのお礼を考えたり、キャンペーンを期間限定にしたり、既に会員になっている方だけに案内をする形にするなど、連鎖的な勧誘が成立しないようにと私も色々と気をつかったものです。
 何も私が勤めていた企業が特別神経質だったというわけではなくて、一般的な商取引を行っている企業では、販促や顧客ロイヤリティーを高める事を目的として展開しているキャンペーンなどを、厳しい法規制を受けている『マルチレベルマーケティング』と一緒にされる事に当惑を覚えるのでは無いのでしょうか。
 
 こうした事がある一方で、悪質な『ネットワークビジネス』の勧誘セミナーなどでは、意図的に言葉の意味を混在させて消費者をミスリードするように誘導していくパターンがよく見られます。話の中のある部分では大手を含めた一般企業が使っている『口コミ戦略』という意味合いで『マルチレベルマーケティング』という言葉を使ったかと思えば、そのすぐ後では『連鎖販売取引』の意味にすり替わっていたりするわけです。
 
 
 もちろん世の中にはそうした誤魔化しを行わずに、法律や社会倫理を守って『ネットワークビジネス』という形態に取り組んでいる誠実な企業もあるかもしれません。ですから『ネットワークビジネス』を行っている企業というだけで、すべて頭から”悪い”と決めつけるべきではありません。しかしその一方で、現実の問題として『ネットワークビジネス』を行っている業者の中には、法律に違反したり、会員を騙して一般常識や社会倫理から逸脱させることで利益を得ようとしている様な所が多いという事もあります。中には最初の方は常識的な活動を行っていたのに、経営が行き詰まってくると段々と逸脱していくというケースもあるそうです。そうした事を踏まえて、悪徳商法に引っかからないためには消費者は注意して『ネットワークビジネス』を判断する必要があると言えるでしょう。
 またこの『ネットワークビジネス』と、法律で禁止されている、いわゆる『ねずみ講』との関係は次回以降で触れることにします。
 
  
 
■『ネットビジネス』ってのは?
 
 さて、もう一つのワードとして『ネットビジネス』があります。これは、いわゆる『インターネットビジネス』と同様のものだと勘違いさせるような説明がよくあるようです。
  
 世間ではインターネット上のビジネスというと、まず最初にgoogleやフェイスブック、アマゾンやヤフーといったものを想像してしまうかもしれません。他にもオンラインの決算システムや、オンラインゲームや動画配信などの分野を思い浮かべる人もいるでしょう。『インターネットビジネス』と言われると、ついつい、そうしたインターネットを活用したイノベーションを起こしている企業を連想してしまうかもしれません。
 
 しかし『ネットビジネス』というのは、それらと少々趣が違います。確かにインターネットは利用するのですが、基本的には既存の企業が提供しているサービスを活用して儲ける事が主体となっています。
 例えばヤフーは『インターネットビジネス』としてヤフオクを運営するという事業を行っています。その「ヤフオクに出品することで儲けよう」というのが、一般的に言われる『ネットビジネス』の部分です。
 
 もちろんオークションだけではなくて、アフィリエイト広告やドロップシッピング(無在庫販売)、転売やせどりなどの手法を使ってのネットショップの運営から、競馬やパチンコの必勝法といった『情報教材』、あるいは”アドレス収集”、”マルチ投稿スクリプト”や、ネット通販されている商品の”差額検索ツール”といった各種のツールの販売なども『ネットビジネス』に含まれます。さらに、こうした“「ネットビジネスで稼ぐことを指導する」というと言う『情報教材』”も数多く売られていたりします。
 この『情報教材』を売る人のことを『情報起業家』と言います。その代表格の一人に数年前に派手なプロモーションとメディア露出を行って世間で話題になったY氏の名前があげられるでしょう。『NtBカレッジ』代表を務めているS氏もまた『情報起業家』の一人として知られており、かつてY氏の会社から『情報教材』を販売しています。最近でもY氏が発行するメルマガで『NtBカレッジ』の運営スタッフの求人募集が行われたりしています。
 
 
 『情報教材』のポイントの一つに、実際の所はともかくとして「自分も実践して稼げた」と言って他の人に宣伝して売りつけることでアフィリエイト収入などを得られる立場の人を作り出している点があげられます。もちろん実際に稼げているのかもしれませんし、多少オーバーに言っているのかもしれません。あるいは全くの嘘かもしれません。しかし「稼げた」と他人に言うことで「お金が入るかもしれない」と考える人を作り出している構造があることには注意が必要です。
 
 実際、この『情報教材』の世界には詐欺や詐欺的な商品が非常に多いことは多くの人が指摘されています。未だに「ネットビジネスで簡単に百万円の副収入が稼げる」とか、色々と景気の良い勧誘が数多くあったりしますが世の中には「そうそううまい話は無い」ということは肝においておくべきでしょう。
 
 
■さてさて。

 ここまでは一般的な『ネットワークビジネス』と『ネットビジネス』の説明をしてきましが、今回問題としてとりあげる『NtBカレッジ』は、こうした『ネットビジネス』に『ネットワークビジネス』の仕組みを掛け合わせたものを展開しています。次回からはその実態に関して迫ってまいります。
 

続きます。
 

※本稿では現時点で正式な名称を記載する予定はありませんが『NtBカレッジ』は2016年6月現在も活動中です。読者の皆様には賢明なご判断をして頂ければ幸いです。
 

トップ画像: 実際に配布されている資料より作成
中画像: 自主製作資料より作成

めきし粉書房代表。電子書籍とか出してます。 オカルトから文芸、その他。 最近のメインテーマは「プロパガンダ」とか「マインドコントロール」 貧乏オーディオ愛好家。

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