日本アニメの歴史は来年で100年!?  アニメ会社超党派プロジェクト『アニメ100』始動!

  by いしじまえいわ  Tags :  

『一般社団法人日本動画協会』は国産アニメが100周年となる2017年に向けて『日本のアニメーション100周年プロジェクト』通称『アニメ100』を発足しました。
それについて、4月に行われたシンポジウムに参加してきたのでレポートいたします。

来年でアニメ100周年ってホント??

一説には1917年1月に浅草の映画館で公開されたとされる『芋川椋三玄関番の巻』(いもかわむくぞう げんかんばん のまき)という作品が日本初のアニメ映画と言われています。
ただし、この作品は正確な記録やフィルムが残っていないためどんな作品だったのかは現在分かっておらず、上記の公開日も定かではありません。

同年6月に同じく浅草で公開された『なまくら刀』(別名:『塙凹内名刀之巻』はなわへこない めいとう のまき)という作品もあります。こちらは記録もフィルムも現存しています。

(※wikipedia より引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/塙凹内名刀之巻 )

いずれにしても1917年公開のアニメ映画ですので、ちょうど100年前、1917年が日本アニメの起点と考えていいでしょう。

アニメは最近のものというイメージがありますが、実は1世紀前の大正時代から楽しまれていた歴史あるエンターテインメントだというのは驚きですね。

『日本のアニメーション100周年プロジェクト』始動宣言

ではさっそく、4月19日に秋葉原で発表された『アニメ100』のプロジェクト内容について見ていきましょう。
当日は下記のプロジェクト推進会議メンバーが登壇されました。どの方も一人でイベントゲストとして登壇するレベルのアニメ業界トップクラスぞろいです。

植田益朗氏(推進会議座長/株式会社アニプレックス 取締役会長)
宮河恭夫氏(同 副座長/株式会社サンライズ 代表取締役社長)
石川和子氏(同 副座長/日本アニメーション株式会社 代表取締役社長)
吉田力雄氏(同 委員/株式会社トムス・エンタテインメント 特別顧問)

※情報は2016年4月19日現在のもの。

冒頭で日本動画協会の理事長でもある石川氏から開会のあいさつがあり、続いて座長の植田氏から本プロジェクトを構成する3つのパートをそれぞれメンバーがプレゼンテーションする旨説明がありました。

以下『アニメ100』について、3パートに分けて見ていきましょう。

1.データべース『日本のアニメ大全』

吉田氏(下記写真右)からは、日本のこれまでのアニメ作品の情報を網羅するデータベース『日本のアニメ大全』構築に取り組むことが発表されました。

『日本のアニメ大全』では商業系・アート系を問わずあらゆる国産アニメの作品名やスタッフ、制作スタジオの検索だけでなく、版権窓口への連絡先も検索可能になる。
これによりアニメ作品やキャラクターを利用したいビジネスマンや海外のバイヤーがどこに相談すればいいのかが明らかになり、アニメビジネスが円滑になることが期待されます。
加えて、アニメ職人の技術や精神を継承するオーラルヒストリーのアーカイブや、国際シンポジウムでのそれらの発表も行う、とのことでした。

2.『アニメーション教育・人材発掘』

石川氏(下記写真左)と植田氏(下記写真右)からは『アニメーション教育・人材発掘』についてのビジョンが語られました。

植田氏からは子供の頃からアニメ制作に接することができる教育環境づくりとして、“サマージャンボリー”(または“アニメ虎の穴”)という子供向け短期集中アニメーション強化合宿のプロジェクトが発表されました。
「宮崎(駿)さんのような人材輩出を目標とし、100人の子供たちを100人のクリエイターが育てる、くらいのことをしたい」ということで、クリエイター・プロデューサー・学校関係者の協力を呼びかけました。
加えて、アニメ業界の創作環境の整備やアナログからデジタルへの制作環境の移行などについても対応していくことが発表されました。

石川氏からは学校教育に想像力・観察力を養うカリキュラムとしてアニメ制作を盛り込めるよう働きかけていく方針が語られました(実は中学校学習指導要領・美術編においては漫画・イラスト・コマ撮り短編アニメは指導すべき対象になっています)。

また、既にアニメ業界人であるビジネスマンに向けた教育も急務とのことでした。
これについては『アニメ100』の母体である日本動画協会にてすでに下記のプログラムが実施されています。我こそはという方はぜひ参加してみてください。

□日本動画協会『第6期アニメビジネス・パートナーズフォーラム』
http://abpf.jp/

3.『アニメNEXT100』

宮河氏(下記写真右)は『アニメNEXT100』のプロジェクトとして、3つの大きなアニメイベント企画を発表されました。

(1)『日本のアニメ大全』展示・巡回
既存の国内外のアニメ関連フェスティバルにて先述の『日本のアニメ大全』をアカデミックな見地から展示・巡回し、地域活性や海外進出ともつなげていく。
(2)企画上映会+ビジネスマッチング
アニメの企画上映会を2017年から開始する。ここではシンポジウムやセミナーカンファレンスも同時に行いビジネスにつながる新しいものにしていく。
(3)体感型イベント『アニメNEXT100』開催
徹底的にエンターテインメントに特化し、体感型のライブ・フェスティバルを2017年以降実施する

これらを2017年をプレ・イヤーとしてその後も継続していき、アニメ業界だけでなく食品などの別業界や地方自治体などとも連携してアニメの次の100年を考えていきたい、と意気込みを語りました。

『アニメ100』メンバーそれぞれのこだわりのアニメとは?

発表終了後、参加者から「アニメの中でこの1本! というこだわりのタイトルはどれですか?」という質問が4名に向けられる一幕がありました。

吉田氏(トムス)のこだわりのアニメ

吉田氏は『ルパン三世 カリオストロの城』を挙げられました。

( ※画像は公式ページより引用 http://lupin-new-season.jp/ )

「入社して最初に携わったのは『巨人の星』ですが、その次に携わった『ルパン三世 カリオストロの城』は世界中で今でも人気で“アニメは年を取らない”を体現していると感じます」と作品への想いを語られました。
トムス・エンタテインメント作品には『名探偵コナン』『それいけ! アンパンマン』など数多くのビッグタイトルがあるのですが、その中でも『カリオストロの城』は吉田氏にとって別格なようでした。

石川氏(日アニ)のこだわりのアニメ

石川氏は『世界名作劇場』シリーズと『ちびまる子ちゃん』を挙げられました。

(※画像は公式ページより引用 http://www.nippon-animation.co.jp/ )

「子供のころは『巨人の星』や『あしたのジョー』は毎週見てましたし、『キャンディ♡キャンディ』が大好きでした。この仕事に携わるようになってからは、自社作品ですみませんが、世界中の子供たちに親しまれている『世界名作劇場』や『ちびまる子ちゃん』はとてもいい作品だと自負しています」とのことでした。

当日お召しになられていたブラウスも、よく見るとまる子柄でした

宮河氏(サンライズ)のこだわりのアニメ

宮河氏は「すごく意外と思われるかもしれませんが」と前置きしたうえで『未来少年コナン』が大好きと明かされました。

※画像は公式ページより引用 http://www.nippon-animation.co.jp/na/conan/

「NHKの宮崎さんの作品ですね。話すと長くなるんですが……コナンってすごく純粋な男の子なんです。ラナというヒロインが海底に沈むんですけど「ラナー! 死んじゃダメだ!」と言ってコナンが海の中に入っていくんですね。大人の商売の世界でいろいろあったときに『未来少年コナン』のそんなシーンを見直して、あ、もっときれいな大人になりたいな、と心を改めるんです

まさかサンライズの社長のアニメ語りを聞けるとは思っていませんでした。しかも自社作品じゃないし。クールに見える方でしたが、熱い男なんだなと思いました。

植田氏(アニプレ)のこだわりのアニメ

植田氏は思い入れのある作品として、同じく他社作品である初代『機動戦士ガンダム』を挙げました。

※画像は公式サイトより引用 http://www.gundam.jp/movie/index.html

「もしこの作品に出会っていなければ、きっとこの席にも座っていなかったと思います。偶然入ったサンライズという会社で偶然関わった作品ですが、よもやこんな時代まで語っていられるようになるとは思っていなかった、まさに人生を変えた作品です。今後も次の若い世代に作っていってほしいと思います」とのことでした。

座長・植田益朗氏ってどんな人?

本記事の写真でたびたびシャア・アズナブルの真っ赤なコスプレ姿で写っているのが『アニメ100』座長の植田益朗氏です。
ガンダムの会社の社長の横でガンダムのキャラクターのコスプレという通常あり得ないことをしているこの方は、いったい何者なのでしょう?

植田氏はサンライズからアニメ業界に入り、数々の作品プロデュースを経てアニメ制作会社『A-1 Pictures』創立にも携わった、レジェンド級のアニメプロデューサーです。

サンライズ時代にはガンダムの他に『銀河漂流バイファム』『シティーハンター』『機動武闘伝Gガンダム』などの名作アニメのプロデューサーを務め、A-1 Picturesやアニプレックスでも『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『ソードアート・オンライン』『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE1000%』『甲鉄城のカバネリ』など最新のヒット作も手掛けています。

そんな植田氏がシャアのコスプレをするのは、自分の原点を体現したいだけでなく『アニメ100』を特定の会社によるものではない、アニメ業界全体で取り組むプロジェクトにしたいという思いの表れのようです。

日本のアニメが100年後まで発展し続けられるのかを賭けた超党派プロジェクト『アニメ100』。アニメファンであれば目が離せないプロジェクトになりそうです。

『アニメ100』には公式サイトがある他、(公式ではありませんが)座長の植田氏によるツイッターアカウントも運用開始されています。
ご関心を持たれた方はぜひチェックしてみてください!

□『アニメ100』
http://anime100.jp/index.html



※写真は著者の撮影によるものです。
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1980年生まれ / 東京大学大学院情報学環教育部研究生 / SOS団東大支部団員 / 修士(社会学)、アニメ研究の傍ら、アニメ系ライター、ネットラジオ『植田益朗のアニメ! マスマスホガラカ』構成作家、アニメ・特撮番組の企画コンサルティングなどをやっています。好きなアニメ・特撮は『涼宮ハルヒの憂鬱』『機動戦士Vガンダム』『星雲仮面マシンマン』『仮面ライダーBLACK』など(本当はもっと)。お仕事のご相談はFB・twitter等でお気軽に。

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