息をするようにウソを付き続ける舛添会見

  by kourokan  Tags :  

舛添要一・東京都知事が5月20日に行った釈明会見は知事自らが招く第三者による調査で数々の疑惑を精査する、の一点張り。燃え上がる都民の怒りとは対照的に、本人は辞める気などサラサラない様子。

法的にも政治資金規正法の虚偽記載に違反する疑いだけで、修正報告してしまえば済む話であり、「法的に何ら問題はない」を根拠にのらりくらりと任期まで逃げ切ろうという算段のようだ。今回の問題、見るたびに腹が立つのは、違法性の有無ではなく、また政治資金の私的流用でもなく、舛添の都民を舐めきった態度である。誠実さの欠片もなく、最初に行われた5月13日の会見で、彼の口から出る言葉の全てが嘘偽りに満ちていた。

正月三が日に家族と訪れた温泉宿の部屋で重要な会議をしたというのは、全くありえない話ではない。が、2年続けて家族が憩う場で政治の機微に触れる会議をするだろうか。しかし、それ以上に首を捻らざるを得ない言い訳が飛び出した。クレヨンしんちゃんの漫画やクイズ本などを美術品と同様に「資料代」「書籍代」などの名目で処理し、2011、2012年の2年分だけで計約907万円に及んだことについて、「保護者から『子供がクイズばかりやって困っている』『子供が悪い言葉遣いを真似てしまう』などの陳情を受け、内容確認のために買った」という珍妙な屁理屈だ。

●毎日のようにそういう陳情は来ません
“塗り”が甘いと思ったのか、さらに上塗りをする。「一度国会議員をやってみれば分かると思うが、毎日のようにそういう陳情が来る。だから、わざわざ買ったわけです」。

私は国会議員事務室で、舛添都知事と同様に国際政治学者と自称する参議院議員の秘書を3年間勤めたが、ただの一度でさえ、このような陳情を受けたことはない。

国会議員の元に寄せられる陳情のほとんどは、「社会保障費を上げて」「保育所の充実を」「地元の公共事業に箇所付けを」といった予算や補助金を求める生々しいものばかりだ。

●我が子のことで相談する親御さんがいる?
身の回りの親御さんを想像していただければ想像がつくと思うが、我が子に対する個人的、家庭的な相談を、わざわざ国会議員に相談する親がいるだろうか? 

まず地域の保母さんや教育施設、もしくは教育委員会にでも相談するだろう。仮に愛国心に富んだご両親だったとして、「国民の言葉遣いを正したい」と思うのなら、なぜよりによって少数野党(舛添知事は当時、新党改革代表)の国際政治学者のもとに相談するのだろうか?

お門違いも甚だしい。全国比例での当選であり、地元に密着した議員でもない。どんなに政治に疎い親御さんでもせめて、文科省の政務三役くらいは経験している文教族の与党議員に相談を持ち込むのではないだろうか?

●漫画やクイズ本を買って何の政策効果がある?
「子供がクイズばかりやって困っている」というのもよく分からない。テレビゲームばかりやっているならともかく、子供がクイズ好きで悩む保護者なんて、世の中に一体何人いるだろうか? 知的好奇心に溢れる我が子にむしろ将来への夢が膨らむばかりだと思うのだが。

百歩譲って、そういう親が連日、当時の舛添議員の元に相談されたとしよう。そういった相談を受けて、漫画本やクイズ本を買うような世情に疎い人間であるのなら、そもそも国会議員なんて辞めてしまえ、と言いたくなる。

クレヨンしんちゃんを見たことも聞いたこともないのであれば、先ずはネットでチョチョッと検索すれば、どんな内容でどんな言葉遣いか、すぐに分かる。漫画本を購入して熟読して、画期的なアドバイスができるのだろうか。クイズ本を熟読して、クイズを止めさせるアイデアでも生まれるのだろうか。

●有権者を小バカにした稚拙でセコい言い訳
こうした稚拙でセコい言い訳の一つ一つが、有権者を小バカにしている態度に見える。舛添知事は何度も頭を下げた。しかし全て2秒以内。ウソをついているバツの悪さからか、頭を上げても前を向くこともなく、手元の文書に目を通す形式的なお辞儀で、反省している態度には到底見えなかった。

各種調査で9割以上の人が会見内容に「納得できない」と回答した理由は、舛添知事のこうした上から目線と小手先だけのごまかしを見抜いたからだろう。釈明会見は図らずも知事の本質を全国民に示す貴重な場になった。
「信なくば立たず」の言葉を一顧だにしない舛添の政治姿勢には、怒りを通り越して情けない気持ちにしかならない。

永田町に精通し現在ウェブを中心に執筆活動