アマガミ~天国と地獄のその淵を~

  by ちゅる  Tags :  


あま‐がみ【甘噛み】 [名] (スル) 飼い犬や飼い猫などが、人の指などを軽くかむこと。デジタル大辞泉より

―アマガミ。それは、とても甘美な響き。誰かからの愛情表現。それに飢えているというシグナル。―

今回、ご紹介するのは、PS2ゲーム「アマガミ」だ!
TVアニメ化を2度達成するなど、その勢いは留まることを知らない。そんな、アマガミワールドに少しだけ浸ってみませんか……。

このゲームの主人公は橘純一。どこにでもいる男子高校生。少しだけ、エッチで、そして過去の思い出から、恋に対して臆病な彼の青春ラブストーリー。「雪降る夜に、届けたい想いがあります」そんなキャッチコピー通り、物語はクリスマス前の冬のある日から始まる。

彼は、ひとりの先輩に思いを寄せている。森島はるか。それが、憧れの先輩の名だ。少しだけ、天然。そんな学園のマドンナ。ひょんなことから、先輩と接点を得た彼は……。

そんな彼のクラスには、悪友梅原の他に、絢辻詞、棚町薫といったクラスメイトがいる。誰からも優等生として、信頼される詞には、その心の裏に暗い影があった。彼だけに見せる素顔、仮面の剥がれた彼女はその赤裸々な気持ちを……。
対して、薫はそのさばさばした性格で彼の悪友のひとりだ。時に有り余る好奇心がトラブルメーカーとしてはたらいてしまうのだ。二人は次第に打ち解けあい……。

隣のクラスには、幼馴染の桜井梨穂子がいる。いつも、自分の体形のことを気にしている彼女は、それ以上に彼のことを気にかけている。彼にいつも優しく接する梨穂子。そんな二人に、幼馴染以上のつながりを感じさせたのは……。

彼には、美也という妹がいる。美也と同じクラスにいる七咲逢。クールな彼女の心の隙間に入り込んだ彼は、彼女にしょうがないなあなどと思われながらも、心を許されて……。逢と同じクラスにいる中多紗江、そのダイナマイトボディに彼の視線は奪われて。温室育ちの彼女が心を許せる男性としての彼は……。

最後に、上崎裡沙

おっと、これは、ゲームをやってからのお楽しみだ。

―ここからはネタばれです―

天国のように快適な時間を味あわせてくれるアマガミ。しかし、それが、地獄へと変化する瞬間がある。

BADENDだ。ゲームには終わりがある。それを見届けるのが、ゲーマーの務めとも言えようが、これから紹介するエンドはそれにしても衝撃的すぎる。
特に気になった2人をフィーチャーしよう。(アマガミのストーリーはリアリティを追求しつつも、その人物の優しさには、非現実感が伴う場合が多い。約束を反故にした彼を優しく許す桜井梨穂子など、その筆頭であろう。だからこそ、そうでないリアリティを伴った彼女らをクローズアップする)

 

―絢辻詞スキBAD

彼女と交わしたクリスマスの約束を守れなかった純一。
彼女は待っていたのに。やっと、心を許せる、仮面を剝して、本当の自分として対峙できる彼。本当の自分を見つけてくれた彼のことを待っていたのに。純一は、後日彼女に会う。そして、あの日のことを詫びるのだが……。彼女は聞く耳を持たない。
それは私に言うことじゃない。あの子に言って。と。状況を理解できない彼。彼女は言葉を紡ぐ。あなたに対して、好意を持っていた私の中の気持ちをあの子と呼んだ。と。分かってくれなくてもいい。と。

悲しい言葉。彼女にとっては、彼だけが支え、唯一の理解者であったのに。家族も友達も、みんな優等生としての自分だけを見ていて。彼だけが、本当の私を見つけてくれたのに。彼女は再び、心を閉ざしてしまったのだ。いや、より正確に言えば、誰かが自分を分かってくれると思っていたひとかけらの希望みたいなものも、胸の奥底、もう、開くことはない場所へしまいこんでしまったのだ。

彼がしたことは、彼が、昔好きな子にされたことと同じだった。彼が、恋愛に対して臆病になる原因となったあの日のことと。二人にとっては、大事な約束だったのに。もう、彼女は、二度と心を開いてくれない。なのに、ENDタイトルの示すスキの文字だけが輝く……。

 

―森島はるかスキBAD

彼女との約束を反故にした彼。街を見下ろす公園に彼女を呼び出して、説得する。彼女は、首をタテには振らない。あれほど、言い寄られていた彼女が選んだ彼だったのに。裏切られるなんて。しかし、そこにあったのは彼女の決意。彼の行動をまっすぐ見つめて。彼を、諦めた。

10年の月日を経て、出会った彼女は、とても立派になっていて。その心労は、見えるけれども、もう、助けることのできないほど、遠くへ行ってしまっていて。彼女と離れて、自分なりに頑張ったと思っていた彼に「部下に恵まれていないようね」なんて嫌味をぶつけられるほどで。反論もできない。彼がいつも上に見ている上司さえ、ひれ伏すほどの地位にいて。やつれきった森島先輩、いや、森島部長は、それでも憂いを帯びた美しさを持っていて。

何もできない彼は、もう、この会社にいることはできないな。と。何もできない自分に還った。

純粋で恥ずかしくて、エッチで。楽しい青春の先を示唆している、このふたつのENDを噛み締めながら、今日も仕事に励むのだ……。

文章を書くことが好きで、ずっと書き続けています。 センテンスの短い文章を書くことに定評があります。 いつもわくわくを胸に。 mail:tyurunnu@livedoor.com