【通勤読書】31:philosophia


<『philosophia』 天野しゅにんた>
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この本は、ずばり『ジャケ買い』です。もう吸わなくなって随分と経ちますが、以前は喫煙者でしたので表紙の二人の感じが懐かしいなと思い、ついKindleのボタンをポチッとしてしまいました。大学生の愛と先輩の知の二人の関係を丁寧に追った連作集です。
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愛は入学した大学の喫煙所で出会った知に「火、貸してくれます?」と声を掛けられ、持っていたライターで火を貸します。知に自分のライターをあげて喫煙室を出た愛は呆れたり、びっくりしたりしているうちに一年を過ごして二年生になり、また煙草を吸っている時に「火、貸してください」と知に声を掛けられて再会して・・・という感じで物語は進行します。この『喫煙場所でしか会わない人』という設定は喫煙者あるあるだなと思いました。喫煙者同士の共犯意識と言いますか、全然知らない人なんだけど、少なくとも煙草という嗜好だけは共通していて、悪いことをしているわけではないのに、虐げられて追い詰められていく環境で時間を共有する、あの感じ。これで相手が好みのタイプだったら、どうしようもないよね、っていうことです。本当に、いろいろどうしようもないから、愛と知も、いろいろ仕方がないことになっていったんじゃないかな、と。
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タイトルの『philosophia』は、愛を意味する『philo』と知を意味する『sophia』を足した「知を愛する」という意味を持つ造語です。ページをめくって、主人公の大学生の名前が『愛』で、先輩の名前が『知』と分かった瞬間に、「うわ、これ絶対、私が好きなタイプの話だ」と思ったのですが、やっぱり好きな話でした。そして、この作品には注意事項として「気分が落ちている時には読まない方がよいかもね」という点を付け加えておきます。少なくとも私は読後に、しばらく動けなかったです。食欲も少し落ちました。でも、それだけ心に爪痕を残してくる作品です。そのあたりは、ぜひ本編で確認して頂ければと。そんなこんなでおススメです。
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(写真は著者撮影)
※紙媒体ではなく、Kindleで購入後、スマートフォンとタブレットで読書することが増えたため、添付写真がこのスタイルになっております。ご了承ください。

Kindle作家と会社員の兼業。AmazonKindleにて小説発売中。通勤中の読書をテーマにのんびりと執筆していきます。

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