保育士の持ち帰り仕事をなくそう!-保育士手作りの壁面装飾やおもちゃって必要?質の高い保育の条件とはー

  by yappi  Tags :  

東京都保育士実態調査報告書によれば、保育士の退職理由1位は妊娠・出産(25%)です。しかし、給料が安い(25%)、仕事量が多い(20.3%)、長時間労働(17%)などの理由も同程度の割合があることから、これらの理由を総合的に判断した結果、妊娠・出産を機に退職する保育士が後を絶たないのではないかと考えられます。
そこで今回は、保育士の持ち帰り仕事(時間外労働)に多い手作りの壁面装飾やおもちゃを具体例にあげ、保育士の仕事とその質について考えてみたいと思います。

◼︎本当に必要?保育士の手作り

保育園の壁面にある、画用紙などで作られた可愛らしい装飾。誰でも一度は見たことがあるかと思います。保育雑誌でもアイデアや作り方が取り上げられており、“壁面装飾を手作りすることは保育士の仕事の一つ”と思われている方も多いかもしれません。そして、あの可愛らしい壁面装飾を作る為に、残業代の出ない持ち帰り仕事をしているのが保育士の通例です。

しかし、その目的を改めて考え直すと、保育士が多くの時間をかけて手作りをする必要があるのかどうか、疑問が残ります。

壁面装飾の目的とは、日中多くの時間を過ごす場所で、“こどもが安心し安らげる空間をつくること”や“視覚的な学びの機会をつくること”(例えば季節を感じる・文字や数字などに触れるなど)ではないでしょうか。そうであるとするならば、保育士の手作りにこだわる必要はあるのでしょうか。

例えば季節を感じる為なのであれば、こどもが戸外に出て実際に季節を感じる時間を確保することに重きを置けばいいし、こども自身が拾ってきたものを飾るのでもいいわけです。極論を言ってしまえば、桜のポスター1枚でもいいわけです。実際に、最近ではその手作りの時間的コストを削減するために、室内の装飾を100円均一などの既製品に推奨する取り組みをしている園も存在します。

同じことは、手作りおもちゃにも言えるのではないでしょうか。

手作りおもちゃを勧めている保育園は多く、東京家政大学の中地万里子らの研究においても、手作りおもちゃを保有している園は約7割に上ります。さらに、その割合は乳児の方が高いという結果があります。しかし、“なぜ手作りでなくてはいけないのか”に触れた研究は見当たりません。発達をとらえると、乳児期ではさまざまな素材に触れることや、手先を使うことなどを目的としたおもちゃが適切ですが、今や市販でもいろいろな素材・感触のおもちゃは数多く存在しますし、丈夫で壊れにくいのも利点です。コスト面でも、身近にある素材や廃材から作るとはいえ、接着剤などの費用も考えれば100円均一で既製品を買ったほうが安い場合もあります。壁面同様、おもちゃの手作りはひとつの手段でしかないのではないでしょうか


■“手作り”はこどもと一緒に

さて、壁面装飾やおもちゃを保育士が手作りすることへの疑問を投げかけてきましたが、しかし一方で“手作り”でなくてはできないこともあります。例えば、

・既製品にはない保育士各々が持つアイデア・個性が表現できること
・目の前のこどもの発達や興味に対して一番適した玩具や壁面装飾ができること

などがあげられます。そしてなにより、

・手作りの過程においてこどもが関われば、こどもにとって学びの機会になること

が一番大きいのではないかと思います。

発達段階に応じてこどもと一緒に作れば、世界に1つのオリジナルの作品が生まれます。赤ちゃんには保育士が作っている姿を見せることで、手間をかけてくれたという愛情が伝わります。大好きな先生が作ってくれたということから、興味が広がります。大きくなるにつれて、こどもと一緒につくることができる範囲が広がっていき、こどもは自分で作った達成感を感じられます。壁面として飾られていることで、大事にされているんだと感じることができるでしょうし、自分で作ったおもちゃで遊ぶことはさらなる好奇心や探究心を生むことになるでしょう。

保育士が家に持ち帰って作る壁面装飾やおもちゃは、保育士の負担になるのも関わらず、上記のようなこどもの学びにも繋がりません。しかし、しっかりと目的を持ち“こどもと共に”手作りをするのであれば、それはとても意義のある保育になりえるのではないでしょうか。


■質の高い保育の条件とは?

手作りの壁面装飾やおもちゃはこどもと共に作ってこそ意義がある、と述べてきました。保育士の持ち帰り仕事にするくらいであれば、既製品で揃えたほうがいいと思います。むしろ、最低限の装飾やおもちゃは既製品で揃えられるべきです。近年の保育園新設ラッシュでは、物的環境の準備が乏しく、保育士がやむ負えず手作りするしかない現場があるのが実情です。しかるべき物的環境が整えられたうえで、保育の一環として壁面装飾やおもちゃ作りは行われるべきです。

しかし、それにしても保育中にすべてを手作りし終えるのは至難の業です。筆者も元保育士ですが、保育中にこどもと一緒に作る保育が満足に出来た記憶は数えるほどしかないように思います。時間的・人的・物的余裕がある中で、保育のめりはりを知るベテラン保育士がいる時や、目的を共有し、あうんの呼吸の同期と連携をとり保育が出来ている時などです。しかし、例えば人出不足の時や新人保育士ばかりの時などはそんな余裕はなく、ひとり持ち帰り作った経験があります。

よって、保育中に行うためには、
体制面として
(1)活動に費やすために、人数配置的、物的、時間的に余裕があること
ソフト面として
(2)こどもの発達や興味を見極めることができる保育士がいること
(3)その保育士間で連携をとり、同じ目的を持ち優先順位をつけながら保育ができること

が必要なのです。これはそのまま、質の高い保育の条件にも当てはまるのではないでしょうか。最低基準以上の人的・物的配置と日課の余裕。さらに、こどもに寄り添うことのできる保育士の存在とそのチームワーク。こういった質の高い保育が行なえれば、壁面装飾やおもちゃの手作りを一例として、日々なにかしらある保育士の持ち帰り仕事も減るのではないかと思います。質の高い保育ができ、持ち帰り仕事がなくなることで、保育士は原点である“保育を楽しむこと”ができるのではないでしょうか。

◼︎まとめ

待機児童問題と付随して、保育士の不足や保育の質の低下も叫ばれています。
冒頭にも挙げたように、保育士の労働条件は厳しく、辞めていく保育士は後を絶ちません。
保育の質とは=物的環境そのものでなく、それらを生み出す保育士の質ではないでしょうか。
国は、財源の確保を。経営者は、優秀な人材に見合った待遇と、いいチームワークで保育できる体制の整備を。
そして保育士自身も、多忙な毎日だからこそ、ひとつひとつの仕事を見直し、優先順位をつけその手段を選択していく必要があると思います。意識して持ち帰り仕事をなくし、保育を楽しみましょう。
それぞれの立場で保育の現場を見直し、よりよい保育なる現場になることを願います。

山梨県出身。私大総合政策学部に在学中に保育士免許取得、卒業後3年間認可保育園にて働く。現在1児の母。得意分野は、海外旅行・保育・教育・育児など。