通勤風景さえ違って見える、電池要らずのApple専用ノイズキャンセリングイヤホン

  by 野水 克也  Tags :  


首都圏に暮らすサラリーマンにとって、通勤時間は人生の1割を過ごす大切な場所である。
それとともに結婚して子どもが生まれれば、それはとても貴重な一人になれる時間でもある。

しかし、現実の通勤空間はせっかくのプライベートタイムを妨げる障害に溢れている。
朝の混雑、夜の喧騒、騒音、遅延。お気に入りのカーコンポで悠々と好きな音楽に囲まれて通勤する地方のサラリーマンが羨ましくもなる。
せめて地下鉄の騒音だけでも逃れられればと思いボリュームを上げると、隣近所の冷たい視線にさらされるだけ。
なので、ノイズキャンセリングのヘッドホンは、ちょっとした憧れだった。
Boseの「QuietComfort」なんて最高だ。いかにも高品質そうな金属の質感と外を遮断する分厚いイヤークッション。このヘッドホンを付けて目を閉じているイケメン外人の写真を見るだけで、別世界に行っている自分をなんとなく想像してしまう。
とはいえ、ヘッドホン本体に加えて、電池ボックスまでついているその重装備は、通勤カバンに入るものではない。ITベンチャーのギークなプログラマーならともかく、普通のサラリーマンがヘッドホンぶら下げた通勤カバンは持てない。そもそも少ない小遣いでは断線とか怖すぎてこういう高額な精密機械は通勤電車の中で使う気にはなれない。

そう思っていた矢先に、見つけましたよ、「Blackbox-i10」というやつ!

カナル型イヤホンで大きさが普通のイヤホンサイズであるばかりでなく、なんと、ノイズキャンセリング方式につきものの電池ボックスがないじゃないか!
それもそのはず、「iPhone(iPod、iPad)」専用設計なので、Dock接続することで、電源も音もいっしょに供給されるという優れもの。
つまり普通のイヤホンとほぼ同じコンパクトさで持ち歩けるのだ。

価格は1万円をちょっと割るくらい。カナル型イヤホンとして見ると高級品に入る。しかし、ノイズキャンセリングイヤホン、それもデジタルタイプとしては他メーカーよりかなり安い。それに電池ボックスがないとくればこれはお買い得かもしれない。

届いたパッケージはコンパクト。中には持ち運ぶキャリングケースと替えの3種類の大きさのイヤピース、そして説明書が入っているシンプルな構成。
本体だけ見ると、ちょっと高級目のカナル型イヤホンとなんら違いはないくらいにコンパクトである。
説明書は英語だが、イヤホンなので読む必要はそもそもないだろう。

使い方は簡単で、iPhoneの底面にあるDockコネクターに挿し込むだけ。特にアプリなどを使う必要もなく標準のiPodアプリでいつもどおりお気に入りの曲を鳴らせばよい。

コンパクトさに惹かれて入手したものの、気になるのは音質とノイズの消し具合。
なにせ、以前に某国産メーカー製のノイズキャンセリングイヤホンで痛い目に合っている過去があるのだ。
そのときもほぼ衝動買いだった。今のようにiPodなどが流行る前なので、電池ボックスは外付けだったが、それでも単4電池1本でまあ我慢できる程度だった。価格も同じように1万円程度。
しかし、音がひどかった。
ノイズキャンセリングヘッドホンやイヤホンの原理は、外の騒音をマイクで拾ってアンプに送り、アンプでその波形の逆の信号を出力して音楽に加えて出力し、騒音を打ち消すというもの。
当時はアナログ回路で低音部の騒音があまり低減できず、アナウンスは聴こえないが地下鉄の騒音はあまり変わらないレベル。おまけに無音部分でシャーっというFMラジオのようなホワイトノイズが聴こえてあまり使い物にならなかった。
イヤホン自身の音も低音が聞こえず悪かったこともあって、結局1ヶ月もしないうちに普通のイヤホンに戻ってしまった。
なにせ聴きたいのは落着いた低音である。それがこの状態では話にならない。

今回の「Blackbox-i10」は、名前にやや怪しげな響きがあるが、サイトでチェックすると、なかなか期待が持てる。
まず飛行機のノイズキャンセリングイヤホンのシェアがトップの「PHITEK」社のシステムを使っていること。そんな高級品が貸与されるビジネスクラスとやらに乗ったことはないので試したことはないが、世界のVIPがこの技術を使っているのだから期待も高まる。特に低音部が重点的にカットされるセッティングになっているらしい。
そして、それまでの同種製品が胸のリモコン部分にマイクを仕込んで音を拾っていたのに対し、「Blackbox-i10」はイヤーピースの部分にマイクを仕込んで場所による音の差をなくしているという。

マイクを仕込んでいるので形状は普通のカナル型イヤホンより若干大きい。標準サイズのイヤホンと比べてみると横の張り出しが大きいことがわかる。
形状は、なんとも形容しがたい独特な形をしているが、耳にはめると耳の穴だけではなくその周りも上手い具合に押さえて音漏れとマイクの分の重量感を押さえているようだ。
フィット感は普通のカナル型イヤホンよりむしろいい。

で、聴いてみた。
正直、すばらしい!
通勤電車で付けると見事に騒音が遮断される。目をつぶって普通の音量(音漏れには無縁の小さめの音量で聴いています)で聴いていると、いつ電車が地上から地下へ入ったのか気づかないくらいだ。
仕様を確認すると騒音低減レベルは20db。国産の同価格帯の製品が10dbなので、圧倒的な差だ。
それでいて、電車のアナウンスは小さいながらもちゃんと聴こえる。

胸に付けるリモコンも小さい。試しに以前の携帯電話に付いてきたリモコン形イヤホンのリモコン部と比べてもこのとおり。
スイッチは、音量調整(Doc接続なのでiPhone本体のボリュームは使えない)と会話用のマイクスイッチがあるだけだが、それで充分。
スイッチを押すとノイズキャンセリング機能をキャンセルして、マイクで音を拾うと同時に音楽も消してくれるので、会話は外しているときよりむしろ良好になるくらいだ。

音質は、予想に反して太い低音ときめ細かい定位で、カナル型イヤホンとしては驚くべく高音質。iPhoneの標準イヤホンとは比べるレベルにもなく、普段使っている5千円程度のカナル型イヤホンよりむしろいい。これは予想外にうれしい!
ノイズキャンセリング機能とあいまって、地下鉄の中でクラシック音楽や、ロックのベースやバスドラの音が楽しめるなんて、まったくもって驚くほかない。
そして、普通でも減少激しいiPhoneのバッテリー消費が心配だったが、それも1時間の通勤で5%も減っていない。(音楽のみ聞いた場合)

いいことばかり書いているので、ちょっと気になるところ二点ばかり。
一つはリモコン部分のボリュームスライダー。最大でかなり大きい音まで出せるのだが、逆にスライドの幅が小さいので小さいところの音量調整が難しい。電車で揺られながらだとつい大きくなったり、逆に聴こえなくなったりする。あと最小にして消音にしようとしても少し音楽が聞こえる。(iPhoneのiPodアプリをポーズにすればいいだけだが)
あとは、Docに抜き差しするときにかなり大きな「ボツッ」っという音が出る。鼓膜を破るほど大きくはないが、最初はちょっとびっくりする。
せっかく気分よく夢の世界にいながら、降りるときにあわてて外すとこの音が雰囲気を台無しにしてちょっと残念。

しかし、全体的に見れば些細な話。
なにより本当に外の喧騒が明らかに消えるので、まるで電車の中や窓から見る景色が映画のスローモーションやフラッシュバックのように見える。
これは誇張ではなくて、本当にそういう感覚になるのだ。
毒をもって毒を制す大音量ではなく、高品質なノイズキャンセリングシステムによる消音がこんなに感覚に影響を与えるとは思わなかった。

普通のイヤホンとまったく同じハンドリングで済むコンパクトさとあいまって、もうこのイヤホンから離れられなくなりそうだ。

元TVカメラマンで、零細建設業経営者を経て、今はIT企業でマーケティングの仕事。 中学生になった二人の子供に給料を搾り取られて、自分のためにはなかなか使えないお年頃。 新品のガジェットはなかなか買えないので人生経験の深みで中古品をうまく使うセコハンガジェットライフを提唱中!

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