病巣をプリンターで作る?最新技術が集結!『日本ものづくりワールド』

  by 古川 智規  Tags :  

東京ビッグサイトで開催中の「日本ものづくりワールド2015」を取材した。
業界関係者向けの商談展で一般入場はできないので、なかでも設計・ソリューション展を中心にその一部を紹介する。

VMwareといえば、少しITに詳しい方なら仮想化用のソフトだとわかるのだが、記者のような中途半端な知識では仮想化のメリットがよくわからない。コンパニオンの今村仁美さんが以前の取材で知っていたので、最適な技術者に取り次いでくれた。記者は仮想化技術によって一般ユーザーにどのような影響があったののか聞いてみた。

「難しい質問ですね。ものすごく端折って言うとたとえば、仮想化技術によって家で仕事をすることができます。会社に社員分の机やスペースが必要ないのでコストダウンになります。聞いた話では、それによって女性が働きやすくなったといいます。ただ、会社にほとんど来なくていいので、数字だけの結果を求められるだけになりますから、それがいいのか悪いのかは別です」

いわゆるマタニティハラスメントから解放される女性が多くなったということなのだが、逆に数字と結果だけを求めらるので、逆にそちらの方の精神力は必要だということか。

お次は3Dプリンター。もちろん家庭用ではなく産業用なので精度はケタ違い。
記者の目にとまったのは、内臓や骨格のモデルだ。なにも3Dプリンターで作らなくても昔からある。
これを作ったStratasysという米国製プリンターの東北地方代理店で株式会社アピールの吹田博之さんに話を聞いた。

「病院でMRIなどで体の中の写真を撮ります。そのデータを使って3Dプリンターで患者さんの病巣をそのまま再現します。医師側としては患者さんの写真ではなく、患部そのものを目の前にしてより確実な治療が期待できます。患者さん側は、写真を見せられて説明されても実際にはよくわからないという事が多いようですから、自分の臓器で説明を受ければ治療方針も理解しやすくなるし不安が軽減されるというメリットがあります」

実際に実物を見たが、例えば臓器内部の血管を強調したければ、まわりは透明樹脂で作れば中が見えるし、骨は樹脂で軟骨はゴムで作れば本物の骨格のように動くモデルが出来上がる。
樹脂を出して造形するのはよく知られているが、産業用はゴムも出すことができるので、1回のプリントで完成させることができる。すでに大学等では実用段階に入っているという。

大型モニターの一部と思しきこのパネル。センサーが仕掛けられていて、手で触ると絵が描けるというデモンストレーションをしていた。
タッチパネルはスマホでもポピュラーな技術だ。しかし次の瞬間。

パネルの1枚を取り外してしまった。コンパニオンが持てるくらいの重量で、その中にセンサーが組み込まれ、映像自体は裏から投影している「プロジェクター」だった。

バックヤードを見せていただいた。1パネルが1モジュールなので、とても薄くそれがつながっているだけの簡単な構造なのだが、プロジェクターなので液晶パネルのように追随性が悪いこともなく、焼き付きや色あせもなく、パネルをカメラで撮影しても耐えられる再現性がある。組み合わせでいくらでも大きくできるので、もしかしたら家の壁全面がテレビになる日が来るかもしれない。

こちらは株式会社シーイーシーの3Dで複数の動線を表示できる技術。
プラレールの上に小さなチップが積載されている。上にあるセンサーがこれを検知して3Dで動線を表示させる。

産業的には生産ラインやフォークリフトの動線を分析して効率化を図り、コストダウンを狙うツールとして利用される。

しかし、応用次第によっては例えば幼稚園や保育園で子供にチップをつけ、センサーで監視すれば設定で個体識別ができるので、目を離したすきに…という思わぬ事故を未然に防止できるかもしれない。

最後は3Dスキャナだ。丸紅情報システムズが代理店になっている独GOM社の技術。こちらでも以前の取材で知っていたコンパニオンの柏木菜々さんがいたので、技術者を紹介してもらった。
左上の赤い物体がセンサー。これでスキャンする。

3Dプリンターとスキャナはセットだと思われがちだが、産業界では必ずしもそうではなく検査のためにスキャナだけを利用し、サンプルが必要な部署はプリンターを使用する等、単体での利用がむしろ多いという。
非接触式でCCDカメラを2台使用して高速で高精度なスキャンを実現する。小型なので、スキャナ自体をロボットに取り付けて、台座を回転させることが適当ではない、例えば自動車のような大物を固定したまま自動で測定すこともできるという。

産業用途の高い技術は、一般ユーザーにとっては夢のような「高級品」かもしれないが、いつの間にか家電量販店に並び、気が付いたら子供のおもちゃとして利用されていたという例は枚挙にいとまがない。
記者が目にした「高級品」は、明日にでも秋葉原で万人が手に入れることができる技術になっているかもしれない。

※写真はすべて記者撮影

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