楽しい体験の記憶は「うつ」を改善させる 理化学研究所がマウス実験で確認

  by 松沢直樹  Tags :  

労働環境が厳しくなる中で、「うつ病」などの心の病を患う人が増えているといいます。
うつ病は、医師の指導のもとに薬物療法や、休養を心がけることが重要だといわれていますが、楽しい体験を思い出すだけでも「うつ病」の改善につながる可能性があることが、利根川進・理化学研究所脳科学総合研究センター長らのチームが発表したことで話題となっています。

18日に発行された英国の著名な科学雑誌ネイチャーに掲載された論文によると、理化学研究所らのチームは、オスとメスのマウスを一緒に過ごさせ、楽しい体験をしている際に活動している神経細胞を特定。その後、オスの体をラップにくるんで40分以上動けないようにすると、好物だった砂糖水を口にしなくなる「うつ状態」になったことが確認できました。

マウスは、記憶をつかさどる神経細胞に青い光を当てると、記憶がよみがえることが理化学研究所のこれまでの実験でわかっています。研究チームらは、マウスの脳に光ファイバーを差し込み、楽しいことをしている時に活動していた神経細胞に青い光を照射。その結果、青い光を照射されて、楽しい記憶がよみがえっているときだけは、マウスは普通に活動するようになったとのことです。

研究チームは、うつ病になると、楽しい記憶を、楽しいものとして呼び起こせなくなっている可能性があると指摘しています。また、人工的な刺激によって、うつ病が改善できる可能性も、この実験を通じて示唆しました。

今の段階では実験段階ですが、将来的には身体の一部に刺激を加えることで、劇的にうつ病が改善できる可能性があるかもしれません。
同時に、少し落ち込んだ時は、できるだけ楽しかったことを思い出すようにすると、心の健康を保てるのかもしれませんね。

※写真は足成 http://www.ashinari.com/2013/01/27-375779.php?category=265 より

松沢直樹

福岡県北九州市出身。主な取材フィールドは、フード、医療、社会保障など。近著に「食費革命」「うちの職場は隠れブラックかも」(三五館)」近年は児童文学作品も上梓。連合ユニオン東京・委託労働者ユニオン執行副委員長