読前読書録vol.1 飛騨俊吾「エンジェルボール」

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 東京を出て4時間弱。間もなく到着のアナウンスが流れ、電車が減速し始める。降車準備でデッキへと出ると、四角く小さな窓から暮れ始めた空にたなびく雲が見える。万葉の人たちは、朝日を見て”あかねさす”と表現したけれど、今はあかねさす夕空。その刹那、突如として視界に飛び込んでくるスタジアム。巨大なスタジアムのスタンドの合間に一瞬、グラウンドの黒い土と芝生の緑、真っ直ぐに引かれた白い線、そしてスタンドを埋める鮮やかな赤が見える。赤い帽子が、赤いタオルが、赤いTシャツが、ひしめき合い揺れている。やがて新幹線はゆっくりと広島駅へと滑り込んでいく。頭の中を見た残像が何度も何度もリプレイされる。まさにボールパークといった趣のたたずまい。スマートでありながら、どこか武骨な感じがするのは、広島人の雰囲気だろうか。街とともにある雰囲気が、静かなようでいて同時に情熱的でもある。こういうスタジアムを持つ街の人は幸せだ。

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