我ガ肺ハ2個デアル

  by 千徒馬丁  Tags :  

「ハイ、あげる。」

「… … …何コレ?」

「ん~アレやな、バルーンアート。」

バルーンアートの金の卵のレプリカの複製の非売品を落掌

バルーンアート用の長細い風船。
その赤色をと膨らましてとねじってとまるめた、拳をふたつ合わせたようなカタチのバルーン。
アーティスティクな感性にパンチが効きすぎていて、受ける印象が何コレ?以外に見当たらない。
「これで、完成なの?」
「完成品をもらったわけじゃなくて、バルーンアートの人がこぼしていったヤツ」

徒歩5分で行ける場所を徒歩で3時間かけて迷っていたら、なんせ同じ場所をグルグルしているもんでバルーンアートのストリートをやっている人物と、幾度となくストリートを共有した。
バルーンアートのストリートは、こっちでやってしばらくしたらあっちでやってまたしばらくしたら通りを隔てた向こうでやって、という感じにちょっとした場所移動をしながらパフォーマンスをするスタイルで、その場所移動の際にたまたま風が強めだったため、一切合切を抱えたパフォーマーの荷物の中から、アートの部品が地面にこぼれ落ちた。

こぼれ落ちた現場からの聞きかじり情報による事情説明

目の前の惨事を目撃した17歳男子高校生によると、こぼれ落ちた赤いバルーンを拾い、商売道具であろうからと気を利かせ午後1時40分頃パフォーマーに返却しようと試みた。
ところが「ソレあげるよ~」というオーラ全開でパフォーマーは無情にも逃走。
3時間さまよった疲れもあってか判断力が鈍った男子高校生は、血迷って自宅まで持ち帰った模様である。

状況判断の甘さからみる親としての躾再考

処分に困った挙句に男子高校生は母親へのお土産とした。
電車で30分弱の場所から帰った息子にお土産を渡されなどしたら母親は今後、どれほどお土産がうるさいことか。
母親は、お土産を買って来て欲しいのは宿泊を伴う旅行の時だけと口酸っぱく躾ける必要があるだろう。

作品の一部と推測するこの部品を生かすも殺すも自分次第

せっかく持ち帰ったのだからとこの部品に、母親は軽々しく意味を持たせた。

「… … …肺やな。」

ニコチンの悪影響を受けたことなど一度もなく、血滴り肉湧き踊る健康的な完璧な状態の臓器である新鮮なこの肺は日一日と萎んでゆき、ツヤのあった表面は日に日にマット感を帯び、一週間ほどして「随分とちっちゃくなったなァ」と出来心で触ったら、スイッチが入ったかのように朽ちた。

「… … …寿命か。」

人生という名の一部を切り取った、それは立派なアートであった。

※画像:筆者撮影

サルコイドーシス(以下:サル)を患うこと早3年目。そろそろ人間になっているかと思いきや直近の経過観察でもまだサル。しつこいぞ、サル。いつまでだ、サル。 プロフィールのイラストは、入院中の暇つぶしに院内をウロチョロしていた時に知り合った職業が元美少女エロ漫画家の山田課長が、サルの病名普及のためペペペーと描いてくれました。 そんなわけでね、今日はよかったら名前だけでもおぼえて帰ってくださいね、特定疾患治療研究事業対象疾患『サルコイドーシス』略してサル、難病です☆

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