ポストM-1となり得るか?「THE MANZAI」を100倍楽しく見る方法【後編】

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前編はこちら→http://rensai.jp/?p=10337
THE MANZAI公式サイト http://www.themanzai.com/
12月に開催される「THE MANZAI」。引き続き、認定漫才師50組の見どころを紹介していきます。

【非吉本の台頭】
今までのM-1の決勝進出メンバーがほぼ吉本所属であったのに対し、今回は他事務所の漫才師の勢いが顕著であった。筆頭は先般の本戦サーキット第1戦で堂々の1位を獲得したケイダッシュ所属のハマカーン。ボケの浜谷氏の「下衆の極み」「鬼畜の所業」などの独特のフレーズ、目を見開き怒る様は爆笑を誘う。ツッコミの神田氏は言わずと知れた神田うの女史の実弟である。その他ケイダッシュでは芸歴13年のHiHiが残った。京都で行われた本戦サーキット第2戦で2位の成績を残したチキチキジョニーは松竹芸能所属の女性コンビ。芸能人ネタなどの親しみやすい「大阪のおばちゃん」チックな漫才が好評を博した。モー娘。などアイドルの印象が強いアップフロントエージェンシーからは二レンジャー。毒気たっぷりの子供番組のお兄さんネタ一本でここまでのし上がってきたが、一度見ると病みつきになる不気味さである。サンミュージックからはエルシャラカーニぽ~くちょっぷの二組。エルシャラカーニは滑絶の悪さと何を言ってるか聞き取れないが面白いという、漫才として「ありえない」スタイルを確立、ぽ~くちょっぷは話そうとする相方に執拗にビンタを張るなど異彩を放つ。その他、M-1準決勝の常連であった磁石(ホリプロコム)、流れ星(浅井企画)、我が家(ワタナベエンタテイメント)が順当に勝ち残った。

【5upよしもとVSばちーんんんLive】
吉本の若手では、東京の渋谷∞ホールで行われる「ばちーんんんLive」に出演する芸人・大阪は5upよしもとで活躍する芸人が多数残った。東京勢では最早このカテゴリに入れるのも忍びない位の実力派平成ノブシコブシ。テレビではすっかりお馴染みになったが、漫才の腕も上達したか。ミュージシャン’sミュージシャンならぬ芸人’s芸人と言われても過言ではない程、同業者からの評価が高い囲碁将棋。大学生の立ち話風と批判されることも少なくないが、ハマった時の爆発力で一気に決勝を決めるような潜在能力を秘めている。「エンタの神様」でハゲネタで人気となったトレンディエンジェルはイロモノで片付けるのが惜しい程、テクニック抜群の漫才を見せる事が出来るか。そして異色はトリオのグランジ。先の本戦サーキットでは博多大吉氏に「グランジはコントです」と揶揄されるも、自分たちのスタイルを貫けるかがポイントであろう。
大阪勢は昨年度のM-1で知名度を上げた銀シャリが最右翼。続いて本年度の漫才新人賞レース2冠のスーパーマラドーナが勢いに乗る。ジャイアンとのび太の構図をそのまま漫才に持ってきたような暴力的なスタイルではあるが、ネタはよく作り込まれた巧妙な言葉遊びが多い。動きが加われば一気に爆笑をさらうことが出来るだろう。忘れてはならないのが、昨年度のM-1で紳助氏にプッシュされた記憶も新しいウーマンラッシュアワー。本戦サーキット第2戦で1位を獲得した。ネタは昨年度とほぼ変わらない村本氏の滑舌を利用した勢いのある漫才である。力で押すタイプだけに、空回りしなければ戴冠もあり得る。大阪の正統派なしゃべくり漫才では学天即プリマ旦那土佐駒、兄妹コンビのビタミンS、双子コンビの吉田たちとバラエティーに富んだメンバーが揃った。何故か勝ち残ったドレッドノート(笑)。明らかにコントのそれであるが、その全力いっぱいのテンション芸はインパクトを与えるには十分である。

【コント界からの刺客】
幾多の漫才師を蹴落とし、普段はコントを中心に活躍する芸人が勝ち残ったのもこの大会の混沌さを象徴しているといえよう。本戦サーキット第1戦で3位の成績を残したアルコ&ピースはその代表格といえよう。立ち振る舞いは漫才そのものだが、漫才で善しとされてきた「○○になりたい」などの予定調和のネタを突き崩して独自の価値観を提示する。「キングオブコント2011」で見事準優勝に輝いた2700は、独自のリズム芸を漫才にどう転化するか。関西の新人賞レースでは常連の域であるさらば青春の光はM-1準決勝進出の経験あり。そして、昨年度のM-1で辛酸を嘗めたジャルジャルも負けじと参戦した。惨敗に終わった昨年度からどう漫才をブラッシュアップしてきたか、真価が問われるコンビである。

【M-1チルドレンの逆襲】
先のM-1の決勝に進出しながら、十分な結果を出すことの出来なかった漫才師達も「THE MANZAI」でリベンジを図る。千鳥は4度の挑戦で最高が2005年の5位と奮わなかった。関西ではテレビで顔を見ない日はない位の露出度であり、またその殆どがロケである。ロケで培われた度胸で堂々と勝負出来るか。東京ダイナマイトはプライベートの難を乗り越え、笑いに昇華出来るかが鍵であろう。ここ数年はネタが固定気味であり、新しい切り口をそろそろ見せて欲しい。そしてマニアックな人気はあれどM-1で爆発出来なかったPOISON GIRL BANDはペースを崩さず独自の世界観を貫く。後期M-1を支えたナイツハライチもリベンジを誓う。一度だけの出場経験組では、人気者となってしまったU字工事、M-1の惨敗がきっかけで仕事が激減したザ・パンチも定番のツッコミである「死んで~」を封印し新境地に挑む。そして、優勝にあと一歩の最終決戦まで進んだ組としては、南海キャンディーズキングコングトータルテンボススリムクラブであろう。南海キャンディーズはしずちゃんが五輪挑戦中のため準備不足は否めないが、山里氏のツッコミがハマれば再ブレイクも期待できる。キングコングは他を寄せ付けない圧倒的な「漫才愛」を観客に伝えることが出来るか。トータルテンボスはNHKの「爆笑オンエアバトル」三連覇と円熟を極めた。あと一歩でサンドウィッチマンに戴冠を譲ることになり、悔し涙を流した2007年のM-1は記憶に新しい。昨年度のM-1でセンセーショナルを巻き起こしたスリムクラブは勢いもそのままに本戦サーキット第2戦で3位を獲得した。独特のスタイルが飽きられなければ優勝もあるだろう。
そして、歴代のM-1チャンピオンから唯一の参戦となったのがパンクブーブー。THE MANZAIとの二冠は言わずもがな史上初である。チャンピオンを獲ったことによるモチベーションの微細な低下が見受けられなければチャンスはあるだろう。

最後に、松原氏の緊急入院により棄権を余儀なくされた風藤松原は本当に残念であった。来年こそは、緩いテンポのおネェ系ぼやき漫才をTHE MANZAIの舞台で見せて欲しい。明日からは本戦サーキットの第3戦が始まる。この予想や見所がいい具合に当たって、いい具合に外れてくれることを期待したい。

1996年ライターデビュー。非合法ミニコミ「権力の犬」主催。1年余り活動した後に、一身上の都合により完全沈黙→→→→約15年の潜伏生活を経て2011年一身上の都合で勝手にライター復帰。 得意分野はお笑い全般。爆笑オンエアバトル(現オンバト+)の審査員やら、東京の非吉本やら大阪は5upよしもとの若手までレンジ広く補完中。というか笑い飯のファン。俗に言う80年代のアニソン・B級アイドル・アメリカ横断ウルトラクイズ・バンドブーム・漫画・プロ野球・高校野球を広く浅めに嘗めてきました。浜松方面の「書く」仕事も絶賛募集中。普段の啓蒙活動はブログ・ツイッター御参照ください。

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